一、税務署長がした処分に対する異議申立を棄却する決定が判決によつて取り消された場合において、右判決確定の時当初の異議申立から既に三月を経過していても、右異議申立は、昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法八〇条一項一号の規定により当然に審査請求に移行するものではない。 二、税務署長がした処分につき適法な理由附記のある審査請求棄却の裁決があつても、右処分に対する異議申立棄却決定につき理由附記の不備を主張してその取消を求める訴の利益は失われない。
一、税務署長がした処分に対する異議申立棄却決定が判決によつて取り消された場合と昭和四五年法律第八号による改正前の国税通則法八〇条一項一号の適用 二、税務署長がした処分につき適法な理由附記のある審査請求棄却の裁決があつた場合と右処分に対する異議申立棄却決定につき理由附記の不備を主張してその取消を求める訴の利益
国税通則法84条4項,国税通則法(昭和45年法律第8号による改正前のもの)75条,国税通則法(昭和45年法律第8号による改正前のもの)80条1項1号,行政事件訴訟法9条,行政事件訴訟法33条2項,行政不服審査法41条1項,行政不服審査法48条
判旨
異議決定の理由附記に不備がある場合、後に適法な理由附記のある審査裁決がなされたとしても、異議決定固有の瑕疵は治癒されず、依然として当該異議決定の取消しを求める訴えの利益は失われない。
問題の所在(論点)
異議決定の理由附記に瑕疵がある場合、その後の審査裁決において適法な理由附記がなされることで、異議決定の瑕疵は治癒されるか。また、審査請求棄却裁決がなされた後においても、異議決定の取消しを求める訴えの利益は認められるか。
規範
行政庁が決定に理由を附記すべきとされる趣旨は、行政庁の判断の慎重・公正を期して恣意を抑制するとともに、不服申立人に不服申立てや取消訴訟の判断資料を提供する点にある。したがって、異議決定に理由附記の不備がある場合、その後に審査裁決で理由が補完されたとしても、異議決定庁自体の慎重・公正な判断を受ける利益は満たされず、瑕疵は治癒されない。また、審査請求棄却裁決後も、異議決定庁は独自の審理により原処分を取消・変更し得るため、その取消しを求める利益は存続する。
事件番号: 昭和44(行ツ)68 / 裁判年月日: 昭和49年7月19日 / 結論: その他
国税に関する処分に対する異議申立てを棄却した決定に対しては、異議決定固有の瑕疵を理由としてその取消訴訟を提起することができる。
重要事実
上告人(税務当局)が行った法人税更正処分等に対し、被上告人(納税者)が異議申立てを行った。異議決定庁は棄却決定をしたが、その際、理由附記に不備があった。その後、被上告人は審査請求を行ったが、一部の事業年度を除き棄却裁決を受けた。被上告人は、理由附記の瑕疵を理由として異議決定の取消訴訟を提起した。上告人は、適法な理由附記がある審査裁決がなされた以上、異議決定の取消しを求める訴えの利益は消滅したと主張して争った。
あてはめ
本件では、異議決定において理由附記が不十分であった。審査裁決で詳細な理由が示されたとしても、それは審査裁決庁の判断を示すにとどまり、異議決定庁自身の慎重な判断を担保するものではないから、理由附記制度の趣旨は達成されない。また、審査請求が棄却された場合であっても、異議決定庁が自ら原処分を見直す可能性は法的に否定されないため、異議手続による救済を求める利益は依然として存在する。よって、審査裁決の存在のみをもって訴えの利益が失われるとはいえない。
結論
異議決定に理由附記の不備がある場合、審査裁決がなされた後であっても、原処分を維持した部分に関する限り、異議決定の取消しを求める訴えの利益は失われない。
実務上の射程
行政不服審査法上の理由附記の瑕疵と訴えの利益に関する重要判例である。行政処分の前段階としての不服申立手続における手続的適正を重視しており、答案では「手続的瑕疵の独自性」や「裁決主義が採られていない場合の異議決定固有の瑕疵」を論じる際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和43(行ツ)39 / 裁判年月日: 昭和49年9月26日 / 結論: 破棄差戻
一、税務署長がした処分につき適法な理由附記のある審査請求棄却の裁決があつても、右処分に対する異議申立棄却決定につき理由附記の不備を主張してその取消を求める訴の利益は失われない。 二、税務署長がした処分に対する異議申立を棄却する決定が判決によつて取り消された場合において、右判決確定の時当初の異議申立から既に三月を経過して…
事件番号: 昭和51(行ツ)88 / 裁判年月日: 昭和54年4月5日 / 結論: 棄却
一 省略 二 青色申告書に係る法人税の更正処分につき理由雑記の欠如及び推計によつたことの瑕疵がある場合においても、右処分後に青色申告書提出承認取消処分がされたときは、右瑕疵は治癒される。
事件番号: 昭和49(行ツ)52 / 裁判年月日: 昭和49年11月8日 / 結論: 棄却
弁護士懲戒請求者の異議申出を棄却した日本弁護士連合会の裁決に対し、右請求者が提起した取消訴訟は、不適法である。