更正処分(第一次更正処分)の取消を求める訴訟の係属中に、右更正処分のかしを是正するため、係争年度の所得金額を確定申告書記載の金額に減額する旨の再更正(第二次更正処分)と更正の具体的根拠を明示して申告にかかる課税標準および税額を第一次更正処分のとおりに更正する旨の再々更正(第三次更正処分)とが同日付で行なわれた場合においても、右訴訟は、その利益を失うものと解すべきである。
更正処分の取消を求める訴訟の係属中に右更正処分のかしを是正するための再更正および再々更正が行なわれた場合と訴の利益
法人税法(昭和34年法律80号による改正前のもの)31条1項,行政事件訴訟法9条
判旨
先行の更正処分が後の減額更正処分(再更正)によって取り消された場合、たとえ同時に同額の増額更正処分(再々更正)がなされたとしても、先行処分の取消しを求める訴えの利益は消滅する。
問題の所在(論点)
取消訴訟の係属中に、対象となった処分が後の処分によって取り消され、同時に同内容の新たな処分がなされた場合、先行処分の取消しを求める訴えの利益(行政事件訴訟法9条1項)は存続するか。
規範
行政庁がなした各々の更正処分は、たとえ実質的に理由の追完や瑕疵の是正を目的とするものであっても、各々独立の行政処分としての性質を有する。したがって、先行する処分が後行の処分によって取り消された場合には、特段の事情のない限り、先行処分の取消しを求める訴訟上の利益は失われるものと解すべきである。
重要事実
課税当局は、上告人に対し法人税の更正(第一次更正)を行った。上告人がその取消訴訟を提起したところ、当局は訴訟継続中に、所得金額を申告額まで減額する再更正(第二次更正)と、第一次更正と同額の税額を確定させる再々更正(第三次更正)を同時に行い、通知書を一通の封筒で送付した。これは第一次更正の理由不備という瑕疵を是正する目的で行われたものであった。
事件番号: 昭和53(行ツ)55 / 裁判年月日: 昭和55年11月20日 / 結論: 棄却
一 省略 二 所得税法九六条ないし一〇一条の定める資産所得合算課税制度の合憲性を争う主張は、特定の法律における具体的な税額計算の定めに関する立法政策上の適不適を争うものにすぎず、違憲の問題を生ずるものでない。
あてはめ
本件において、第二次更正処分は形式上も実質上も第一次更正処分を取り消す効果を持つ独立の行政処分である。また、第三次更正処分は第一次更正処分と内容は同一であるが、別個になされた新たな行政処分であると認められる。たとえ第二次・第三次更正が第一次更正の理由付記を追完する便宜的措置としての実態を有していたとしても、法的形式としては第一次更正は第二次更正によって消滅している。したがって、既に消滅した第一次更正の取消しを求める本件訴訟は、訴えの利益を欠くに至ったといえる。
結論
本件訴えは、第二次更正処分の行なわれた時以降、その利益を失うに至ったものとして、却下されるべきである。
実務上の射程
処分が後続の処分により消滅した場合に訴えの利益が失われるという「処分消滅による訴えの利益喪失」の原則を示す。理由不備を後から是正するために「減額更正+再度の増額更正」という手法が取られた場合、原告は新たな処分に対して改めて訴えを提起(または訴の変更)しなければならないという実務上の負担を課す結論となっている点に注意が必要である。
事件番号: 昭和41(行ツ)24 / 裁判年月日: 昭和46年3月25日 / 結論: その他
更正処分の取消を求める訴訟の係属中に右処分の一部が処分行政庁によつて取り消された場合には、右訴訟は、すでに取り消された部分の取消しを求める部分については、その利益を失う。
事件番号: 昭和32(オ)1234 / 裁判年月日: 昭和35年2月23日 / 結論: 棄却
税務署長がした所得金額の更正の減額訂正は、所得税法(昭和二四年法律第七六号による改正前)第四六条第四項の更正ではない。