更正処分の取消を求める訴訟の係属中に右処分の一部が処分行政庁によつて取り消された場合には、右訴訟は、すでに取り消された部分の取消しを求める部分については、その利益を失う。
更正処分の取消を求める訴訟の係属中に右処分の一部が取り消された場合と訴の利益
行政事件訴訟法9条
判旨
取消訴訟の係属中に、処分の全部又は一部が後の更正処分等によって取り消された場合、当該取り消された部分については訴えの利益が消滅する。
問題の所在(論点)
取消訴訟の対象となっている行政処分が、訴訟の係属中に後続の減額再更正処分等によって一部取り消された場合、当初の処分の取消しを求める訴えの利益が維持されるか。
規範
取消訴訟の提起後、判決前に行政庁が当該処分を取り消し、又は後の処分によって前の処分の一部が消滅した場合には、特段の事情がない限り、消滅した部分については処分の取消しを求める法律上の利益(訴えの利益)を失う。この場合、裁判所は、訴えの利益の消滅を職権で調査し、当該部分の訴えを却下すべきである。
重要事実
上告人は、税務署長から受けた法人税の更正処分について、役員賞与金の損金算入が否認されたことを不服としてその取消しを求めて提訴した。しかし、訴訟の係属中に、税務署長が減額再更正処分を行ったことにより、上告人が主張していた役員賞与金が損金に算入され、当初の更正処分のうち当該部分は実質的に取り消された形となった。第一審及び原審は、この点を含めて本案判決を下したため、最高裁が職権で訴えの利益の有無を検討した。
あてはめ
本件において、上告人が取り消しを求めていた更正処分のうち、役員賞与金の損金算入を否認した部分は、その後の減額再更正処分によって既に取り消されている。これにより、当該賞与金は損金に算入されることとなった。そうすると、当初の更正処分のうち既に減額再更正によって取り消された部分については、もはや取消しを求める実益がなく、訴えの利益が失われているといえる。したがって、この部分について本案判断を行った原判決及び第一審判決は、訴訟要件の判断を誤ったものと解される。
結論
減額再更正処分により既に消滅した部分の取消しを求める訴えは、訴えの利益を欠くため却下すべきである。当該部分について本案判決を行った原判決を破棄し、第一審判決を取り消した上で、訴えを却下する。
実務上の射程
行政処分が後発的に消滅した場合の訴えの利益に関する典型例である。答案上では、減額更正や撤回が行われた場合に「処分が消滅し、回復すべき法的利益が失われた」として訴えの利益を否定する際の根拠となる。ただし、減額更正がなされても一部が残存している場合は、残存部分について訴えの利益が存続することに注意を要する。
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