人身保護規則三六条の規定はいわゆる訓示的規定であり、これに反する判決が当然無効となるものではない。
人身保護規則三六条の趣旨
人身保護規則36条
判旨
夫婦間等の子の引渡しを求める人身保護請求において、拘束の顕著な違法性を認めるためには、現に子を監護する者に委ねることが子の幸福に反することが明白であることを要する。
問題の所在(論点)
父母間等の子の監護を巡る紛争において、人身保護法上の「顕著な違法性」を認定するための判断基準が問題となる。
規範
人身保護法に基づき子の引渡しを請求する場合、拘束に「顕著な違法性」があるといえるためには、単に監護権の存否のみならず、現在の監護状況が子の幸福を著しく害しており、請求者に監護を委ねることが子の幸福にとって顕著に必要であると認められることを要する。
重要事実
上告人(請求者)が、被上告人に対し、被拘束者である子の引渡しを求めて人身保護請求を提起した事案。原審によれば、被拘束者の被上告人方における日常生活は一応安定しており、直ちにその監護養育を上告人に委ねることにより被拘束者がより幸福になることが顕著であるとはいえないと認定されていた。
あてはめ
本件では、被拘束者の現状の生活が安定しているという事実が重視される。これに対し、上告人に監護を移転させることが子の幸福に資することが「顕著」であるとは認められない。したがって、被上告人による現在の拘束(監護)が、人身保護法上の救済を要するほどの顕著な違法性を有するものとは評価できない。
結論
本件請求は、拘束の顕著な違法性が認められないため、棄却されるべきである。
実務上の射程
子の引渡しにおける「顕著な違法性」の判断枠組みを示した重要判例である。家庭裁判所における監護者指定や引渡しの審判とは異なり、人身保護請求は人身の自由の回復を目的とするため、拘束が明白に正当性を欠き、子の福祉の観点から看過し得ない特段の事情がある場合に限定して認められる。答案では、現行の監護状態が「子の幸福」の観点から維持し難いか否かを具体的事実から検討する際に用いる。
事件番号: 昭和59(オ)97 / 裁判年月日: 昭和59年3月29日 / 結論: 棄却
破綻に瀕している夫婦の一方が他方に対し子の引渡を求めるについて、家庭裁判所に子の監護者指定の審判を申し立て、家事審判規則五二条の二に従い子の引渡の仮処分を申請する方法があるとしても、そのことは、人身保護法による子の引渡請求を妨げるものではない。