破綻に瀕している夫婦の一方が他方に対し子の引渡を求めるについて、家庭裁判所に子の監護者指定の審判を申し立て、家事審判規則五二条の二に従い子の引渡の仮処分を申請する方法があるとしても、そのことは、人身保護法による子の引渡請求を妨げるものではない。
子の監護に関する審判前の保全処分と人身保護請求
人身保護規則4条但書,家事審判規則52条の2
判旨
夫婦の一方が他方に対し、人身保護法に基づき共同親権に服する子の引渡を請求することは可能であり、家庭裁判所による監護者指定等の手段があったとしても、同法による救済を妨げるものではない。
問題の所在(論点)
人身保護法による子の引渡請求において、家庭裁判所での監護者指定等の家事手続が利用可能である場合に、なお人身保護法による救済が認められるか。
規範
夫婦関係が破綻に瀕している場合、共同親権に服する子の引渡を請求するにあたり、家事審判(監護者の指定等)及びそれに基づく仮処分申請等の手段が可能であっても、それらの方法が人身保護法ほどに迅速かつ効果的な救済を達し得ないことが明白であれば、人身保護法による救済手続を選択しうる。
重要事実
夫婦関係が破綻に瀕している状況において、共同親権者である夫婦の一方(被上告人)が、他方(上告人)に対して拘束されている子の引渡を求めて、人身保護法に基づく請求を行った。上告人は、家庭裁判所に対する監護者指定の審判や引渡の仮処分申請という代替手段があることを理由に、人身保護請求の適法性を争った。
あてはめ
家事審判規則に基づく監護者指定や引渡の仮処分という手段は存在するが、これらの家事手続は、人身保護法による手続と比較して、迅速かつ効果的に被拘束者を救済するという目的を達成できないことが一般的かつ明白である。したがって、代替的な救済手段の存在は、人身保護法による請求を直ちに妨げる事由にはならないと解される。
結論
被上告人が上告人に対し、人身保護法による子の引渡を請求することは妨げられない。
実務上の射程
人身保護請求における「補充性」の判断枠組みを示すものである。本判決後、平成5年判決等により、共同親権者間では「拘束の顕著な違法性」が要件として厳格化されたが、依然として家事手続との関係における手続選択の正当性を基礎づける論理として重要である。
事件番号: 昭和47(オ)460 / 裁判年月日: 昭和47年7月25日 / 結論: 棄却
一、年令六年五月余の児童に対する監護は、人身保護法および同規則にいう拘束にあたる。 二、離婚した男女の間で、親権を有する一方が、他方に対し、人身保護法により、その親権に服すべき幼児の引渡しを求める場合には、請求者に幼児を引き渡すことが明らかにその幸福に反するものでないかぎり、たとえ、拘束者において自己を監護者とすること…