民法上の親権者でも監護者でもない第三者が、幼児を養育し、現にその親権者たる実母からの引渡要求を拒んでいる場合であつても、原審判示の事実関係(原判決参照)の下においては、未だ人身保護規則第四条の「拘束が権限なしにされていることが顕著である場合」に当らないと認めるのが相当である。
人身保護規則第四条の「拘束が権限なしにされていることが顕著である場合」に当らない一事例
人身保護法2条,人身保護規則4条
判旨
幼児の引渡しを求める人身保護請求において、拘束者に監護権が認められるなど特段の事情がある場合には、人身保護規則4条にいう「拘束の権限なしになされていることが顕著である場合」には当たらない。
問題の所在(論点)
幼児の引渡しを求める人身保護請求において、被上告人による子の監護が人身保護規則4条にいう「拘束の権限なしになされていることが顕著である場合」に該当するか否か。
規範
人身保護法に基づき解放を命じるためには、人身保護規則4条により、拘束が法律上の権限なしになされていることが「顕著」であることを要する。具体的には、拘束が違法であることが、資料等に基づき一見して明白であることを意味する。
重要事実
上告人が、被上告人(相手方)に対し、本件子供の引渡しを求めて人身保護請求を申し立てた事案。原審(東京高裁)は、判示の事実関係の下では、被上告人による子供の占有・監護が、拘束の権限なしになされていることが顕著であるとは認められないと判断した。上告人は、被上告人には権限がなく、拘束の顕著性は認められるべきであるとして上告した。
あてはめ
最高裁は、原審が認定した事実関係を前提とすれば、本件における被上告人の子供に対する監護状況は、法的な正当性を欠くことが一見して明白であるとはいえないとした。したがって、本件は人身保護規則4条の定める要件を充たさず、適法な拘束権限の欠如が「顕著」であるとは認められないと判断した(昭和29年4月26日大法廷決定の趣旨を引用)。
結論
本件子供の拘束に顕著な違法性は認められないため、人身保護請求は棄却されるべきである。
実務上の射程
人身保護請求によって幼児の引渡しを求める場合、単に実体法上の監護権の有無を争うだけでは足りず、相手方の占有が「顕著に」権限を欠くこと(例えば、特段の事情がない限り、監護権を有しない者による拘束など)を主張・立証する必要がある。実務上は、子の福祉に反することが明白な場合に限定される傾向にある。
事件番号: 昭和56(オ)903 / 裁判年月日: 昭和56年11月19日 / 結論: 棄却
離婚した夫が堺市の妻の実家から幼児を連れ出し北海道の実兄夫婦に預けるなど原判示のような事情のもとにおいては、右夫の行為は、人身保護法及び人身保護規則にいう拘束にあたる。