一、商法九一条一項により合名会社の社員の持分を差し押えた債権者のした強制退社予告の効力を失わせる同条二項にいう相当の担保を供したときとは、差押債権者との間で、担保物権を設定し、又は保証契約を締結した場合をいい、差押債権者の承諾を伴わない担保物権設定又は保証契約締結の単なる申込みは、右担保の供与にはあたらない。 二、所有権又は賃貸権限を有しない者から不動産を賃借した者が同一物について真の権利者とさらに賃貸借契約を締結したときは、はじめの賃貸借は賃貸人の使用収益させる義務の履行不能によつて終了に帰する。
一、商法九一条二項にいう相当の担保を供したときの意味 二、所有権又は賃貸権限を有しない者から不動産を賃借した者が真の権利者から同一物をさらに賃借した場合とはじめの賃貸借の帰すう
商法91条,民法601条
判旨
社員の持分差押債権者による退社予告の効力は、強制執行停止決定によって左右されないが、当該社員が弁済供託等により債務を消滅させた場合には失効する。
問題の所在(論点)
持分の差押債権者による退社予告の効力が、(1)強制執行停止決定、(2)一方的な担保提供、(3)弁済供託によってそれぞれどのように影響を受けるか。また、これに伴う代表権限の有無および賃貸借関係の存続が問題となる。
規範
1. 旧商法91条1項(現行会社法606条3項参照)に基づく持分差押債権者による強制退社予告の効力は、差押えに対する強制執行停止決定によって左右されない。 2. 同条2項の「相当の担保」の供与とは、差押債権者との間で担保物権の設定または保証契約を締結することを指し、債権者の承諾のない単なる申込みはこれに当たらない。 3. もっとも、持分を差し押さえられた社員が債務を弁済(弁済供託を含む)すれば、退社予告はその効力を失う。
重要事実
1. 被上告会社の社員Eの持分に対し、債権者Dが扶養料請求債権に基づき差し押さえを行い、退社予告をした。 2. Eは強制執行停止決定を得たほか、担保として金銭を供託した。また、当該債務について弁済供託としての性質を有する供託も行った可能性がある。 3. Dは、Eが退社により社員資格を喪失したとして、自らが代表社員に就任する登記を行ったが、Eはこの代表権限を争った。
あてはめ
1. 強制執行停止決定は差押手続を一時停止させるものに過ぎず、既になされた退社予告の私法上の効力を当然に妨げるものではない。 2. 「相当の担保」は債権者との合意(契約)を要するため、Eによる一方的な金銭供託のみでは足りない。 3. しかし、Eがした供託が弁済供託としての要件を満たすのであれば、被担保債権自体が消滅するため、退社予告は効力を失う。その場合、Eは社員資格を失わず、Eの同意なくなされたDの代表就任は無効となる可能性がある。
結論
退社予告の効力は執行停止や一方的な担保提供では失われないが、弁済供託により債務が消滅した場合には失効する。原審は弁済供託の成否を審理すべきであったとして、破棄差戻しとされた。
実務上の射程
持分会社における強制退社手続の阻止方法を整理する際に用いる。特に「相当の担保」が合意を要する点や、弁済による遡及的・絶対的な阻止という実務上の対抗手段を確認する際に有用である。また、賃貸借において真の権利者と再契約した場合の履行不能による旧契約終了という法理も示されている。
事件番号: 昭和38(オ)567 / 裁判年月日: 昭和39年9月22日 / 結論: 棄却
建物明渡義務不履行による損害金の請求を受ける被告側で当該建物に対する地代家賃統制令適用の基礎たる事実関係を主張立証しない以上、右損害金算定の基礎として相当賃料を認定するにあたり同令の適用を顧慮しなかつたとしても違法といえない。