債権者に対し供託受領証書を交付することは弁済供託の有効要件ではなく、弁済の効力は供託によつて生ずると解するのが相当である。
債権者に対する供託受領証書の交付は弁済供託の有効要件か
民法494条
判旨
弁済供託の効力は供託によって生じ、供託受領証書を債権者に交付することは供託の有効要件ではない。
問題の所在(論点)
弁済供託の効力発生時期と要件が問題となる。具体的には、供託受領証書の債権者への交付が、供託による弁済の効力発生の有効要件となるか(民法494条の解釈)。
規範
弁済供託(民法494条等)による弁済の効力は、債務者が供託所に供託をしたことによって生ずる。供託者は供託受領証書を債権者に交付すべき義務を負うが、この交付行為は供託の成立・有効要件ではない。
重要事実
上告人(債権者)は、債務者が行った弁済供託について、供託書(供託受領証書)が債権者に交付されていない以上、弁済の効力は生じないと主張して争った。判決文からは原因となった債務の具体的内容は不明であるが、供託の有効要件が主要な争点となった。
あてはめ
弁済の効力は供託という法的手続きの完了によって生ずると解される。供託受領証書の交付は債権者への事後的な通知や証拠提供としての意味を持つに過ぎず、供託そのものの法的効力を左右する要素ではない。したがって、証書が交付されていないことをもって供託を無効とすることはできない。
結論
供託受領証書の交付は供託の有効要件ではない。よって、供託がなされた時点で弁済の効力は生じ、上告人の主張は採用できない。
実務上の射程
弁済供託の効力発生時期を画定する基本判例である。司法試験の答案上は、供託による債務消滅を主張する際、供託した事実のみを摘示すれば足り、通知や証書交付を要件として加重してはならないという文脈で使用する。
事件番号: 昭和36(オ)323 / 裁判年月日: 昭和39年4月10日 / 結論: 棄却
賃貸人が賃貸借契約解除の意思表示をなした後に、右解除の効力を争う賃借人が右解除の日以降の賃料として供託した金員を受領した場合であつても、右受領により賃貸借の解除の効果を消滅せしめ、もしくはそのときに新たな賃貸借契約を締結したものと認めるべき特別の事情でもあれば格別、却つて右供託金受領の前後を通じて賃貸借契約が解除された…