一、地上権の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在するほかに、その使用が地上権行使の意思にもとづくものであることが、客観的に表現されていることを要する。 二、右成立要件の立証責任は、地上権の時効取得の成立を主張する者の側にある。
一、地上権の時効取得の成立要件 二、右成立要件の立証責任
民法163条・265条
判旨
地上権の時効取得が認められるためには、土地の継続的占有という外形的事実だけでなく、その占有が地上権行使の意思に基づくものであることが客観的に表現されていることを要し、その立証責任は時効取得を主張する側が負う。
問題の所在(論点)
他人の土地を継続的に占有・使用している場合に、民法163条に基づき地上権を時効取得するための要件、特に「自己のためにする意思」に代わる要件とその立証責任の所在が問題となる。
規範
地上権の時効取得(民法163条)が成立するためには、①土地の継続的な使用という外形的事実が存在することに加え、②その使用が「地上権行使の意思」に基づくものであることが客観的に表現されていることを要する。また、これらの成立要件に関する立証責任は、地上権の時効取得を主張する者が負う。
重要事実
土地所有者である被上告人が、当該土地上に建物を所有し占有している上告人に対し、建物収去土地明渡しを求めた事案。上告人側は、前主(訴外D)が被上告人の母との間で設定契約を締結した、あるいは長年の占有により地上権を時効取得したと主張して争った。原審は、地上権設定契約の事実を否定した上で、時効取得の要件である「地上権行使の意思の客観的表現」が立証されていないとして上告人の主張を退けたため、上告人が上告した。
事件番号: 昭和43(オ)795 / 裁判年月日: 昭和46年11月26日 / 結論: 棄却
特別都市計画法一三条所定の換地予定地の指定通知が従前の土地の所有者に対してなされたのちにおいては、当該換地予定地を占有するのでなければ、従前の土地を占有したからといつて、その従前の土地の所有権地上権または賃借権を時効によつて取得することはできない。
あてはめ
本件において、上告人は土地を継続的に使用していたものの、単なる占有の事実だけでは足りない。判例の枠組みに照らせば、その占有が賃借権ではなく「地上権」の行使であると客観的に認識できる態様(例えば、地代の支払状況や設定契約に向けた言動等)で表現されている必要がある。上告人は、地上権行使の意思が客観的に表現されていたことを基礎付ける事実を立証できなかったため、時効取得の要件を充足しないと判断される。
結論
地上権の時効取得は認められない。したがって、土地占有に正当な権原がない以上、建物収去土地明渡し請求を認容した原判決は正当である。
実務上の射程
所有権の時効取得における「所有の意思」の判定方法と同様に、地上権についても「地上権行使の意思」という主観的要素を客観的な外形的態様(権原の性質等)から判断する枠組みを示したもの。答案上は、単なる使用継続だけでなく、地代支払の有無や契約締結の経緯などの「客観的表現」の有無を検討する際の規範として用いる。
事件番号: 昭和60(オ)615 / 裁判年月日: 昭和62年6月5日 / 結論: 棄却
甲所有の土地を買い受けてその所有権を取得したと称する乙から右土地を賃借した丙が、右賃貸借契約に基づいて平穏公然に目的土地の占有を継続し、乙に対し賃料を支払つているなど判示の事情のもとにおいては、丙は、民法一六三条の時効期間の経過により、甲に対して右土地の賃借権を時効取得することができる。
事件番号: 昭和44(オ)1165 / 裁判年月日: 昭和45年2月27日 / 結論: 棄却
賃貸人が、借地上の賃借人所有の建物に対し占有移転禁止等の仮処分を執行したことにより、賃借人の借地の使用収益を妨げたとしても、そのために借地法一二条に基づく賃料増額請求が許されなくなるものではない。
事件番号: 昭和44(オ)915 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日 / 結論: 棄却
借地法の適用のある土地賃貸借の期間が、事実審の口頭弁論終結後約六年後に満了する場合において、貸主がその期間満了による賃貸土地の返還を求める将来の給付請求は、その請求の基礎となる権利関係を確定することができない請求権を訴訟物とするものであつて、不適法である。
事件番号: 昭和35(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年5月9日 / 結論: 棄却
出征中の本人の所有財産管理の権限を与えられている者が右財産中の土地を代理権なく売却した場合に、原審認定の事情のもとでは、相手において代理権ありと信ずる正当の理由がある。