特別都市計画法一三条所定の換地予定地の指定通知が従前の土地の所有者に対してなされたのちにおいては、当該換地予定地を占有するのでなければ、従前の土地を占有したからといつて、その従前の土地の所有権地上権または賃借権を時効によつて取得することはできない。
換地予定地指定通知後の従前の土地の占有と従前の土地に対する所有権地上権または賃借権の取得時効の成否
特別都市計画法13条,特別都市計画法14条,土地区画整理法99条,民法162条,民法163条
判旨
換地予定地の指定後は、従前の土地ではなく換地予定地を占有しなければ従前の土地の権利を時効取得できず、また換地予定地の一部のみの占有では従前の土地の特定部分を確定できないため時効取得は認められない。
問題の所在(論点)
換地予定地の指定通知がなされた後において、従前の土地の権利を時効取得するためには、どの土地を占有する必要があるか。また、換地予定地の一部のみを占有している場合に、従前の土地の特定部分を時効取得できるか。
規範
1. 特別都市計画法に基づく換地予定地の指定通知後は、従前の土地の使用収益権が停止し、換地予定地について同内容の権利を取得するため、換地予定地の占有がなければ、従前の土地の所有権、地上権または賃借権を時効取得することはできない。 2. 換地予定地の一部のみを占有する者は、特段の事情がない限り、当該部分に対応する従前の土地の特定の一部分を確定できないため、従前の土地の特定部分に対する権利を時効取得することはできない。
重要事実
本件土地の従前の土地所有者に対し、昭和23年に換地予定地の指定通知がなされた。上告人は、当該指定通知前には数ヶ月しか従前の土地を占有しておらず、通知後は換地予定地の一部のみを継続して占有していた。上告人は、これら占有の継続に基づき、従前の土地の特定部分に係る所有権等の時効取得を主張して、換地予定地に対する使用収益権を争った。
事件番号: 昭和53(オ)204 / 裁判年月日: 昭和56年6月4日 / 結論: その他
一 一区画の仮換地の一部を所有の意思をもつて所要の期間継続して占有した者は、従前の土地につき右占有部分に対応する部分が特定されていないときは、時効により従前の土地に対する共有持分権を取得するとともに、当該占有部分につき、共有持分権者の一人が現に排他的な使用収益権能を取得している場合と同様の使用収益権能を取得する。 二 …
あてはめ
まず、換地予定地の指定通知により従前の土地の使用収益権は失われているため、通知後に換地予定地を占有していない期間については、従前の土地の権利行使の外形を具備しているとはいえない。次に、上告人は指定通知後に換地予定地の一部を占有しているが、その占有部分に対応する従前の土地の特定部分を確定することができない。したがって、権利の対象が特定されず、時効取得の要件を欠くといえる。
結論
上告人は従前の土地の権利を時効取得したとは認められず、これを前提とする換地予定地の使用収益権も対抗できない。
実務上の射程
換地処分前の時効取得に関しては、占有対象が「従前の土地」から「仮換地(換地予定地)」にスライドすることを明確にした判例である。仮換地の一部占有に基づく時効取得を主張する際には、従前の土地のどの範囲に対応するかの特定が必要であり、実務上その立証は極めて困難であることを示唆している。
事件番号: 昭和45(オ)1003 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
否定(昭和三四年(オ)三二六号、同三六年三月七日第三小法廷判決・民集一五巻三号三六五頁参照)
事件番号: 昭和44(オ)915 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日 / 結論: 棄却
借地法の適用のある土地賃貸借の期間が、事実審の口頭弁論終結後約六年後に満了する場合において、貸主がその期間満了による賃貸土地の返還を求める将来の給付請求は、その請求の基礎となる権利関係を確定することができない請求権を訴訟物とするものであつて、不適法である。
事件番号: 昭和45(オ)60 / 裁判年月日: 昭和45年5月28日 / 結論: 棄却
一、地上権の時効取得が成立するためには、土地の継続的な使用という外形的事実が存在するほかに、その使用が地上権行使の意思にもとづくものであることが、客観的に表現されていることを要する。 二、右成立要件の立証責任は、地上権の時効取得の成立を主張する者の側にある。
事件番号: 昭和37(オ)445 / 裁判年月日: 昭和41年4月22日 / 結論: 棄却
借地権者が従前土地上に登記ある建物を所有している場合でも、借地権の申告に基づいて施行者が仮換地上に使用収益部分の指定をしなければ、仮換地上に使用収益権は生じない。