借地法の適用のある土地賃貸借の期間が、事実審の口頭弁論終結後約六年後に満了する場合において、貸主がその期間満了による賃貸土地の返還を求める将来の給付請求は、その請求の基礎となる権利関係を確定することができない請求権を訴訟物とするものであつて、不適法である。
将来の給付請求が不適法であるとされた事例
民訴法226条
判旨
将来の給付の訴えが適法となるためには、請求の基礎となるべき事実関係及び法律関係が口頭弁論終結時までに既に存在し、その継続が予測されることが必要である。本件のように、将来の不確定な事情に左右され、請求権の基礎となる権利関係を確定できない場合は、将来の給付を求める訴えとして不適法となる。
問題の所在(論点)
民事訴訟法135条に規定される「あらかじめその請求をする必要がある」との要件に関し、将来の給付の訴えが許容されるための請求権の基礎的権利関係の確定性の要否が問題となる。
規範
将来の給付の訴え(民事訴訟法135条)が適法とされるためには、あらかじめその請求をする必要があること(訴えの利益)が認められなければならない。具体的には、①請求権の発生の基礎となるべき事実関係及び法律関係が口頭弁論終結時において既に存在し、②その継続が予測されること、③債務者に有利な影響を及ぼすべき将来の事情の変化(義務の消滅、請求権の発生の阻止等)の存否及び内容が、あらかじめ明確に予測し得るものであること、という要件を満たす必要がある。
重要事実
上告人は、将来の一定期間における給付を求める将来の給付の訴えを提起した。しかし、原審の口頭弁論終結時において、当該請求権が発生するための基礎となるべき権利関係が客観的に確定できる状態になかった。このため、将来において実際に請求権が発生するか否かが不確実な状況であった。
事件番号: 昭和43(オ)795 / 裁判年月日: 昭和46年11月26日 / 結論: 棄却
特別都市計画法一三条所定の換地予定地の指定通知が従前の土地の所有者に対してなされたのちにおいては、当該換地予定地を占有するのでなければ、従前の土地を占有したからといつて、その従前の土地の所有権地上権または賃借権を時効によつて取得することはできない。
あてはめ
本件における将来の給付請求は、原審の口頭弁論終結当時において、その請求の基礎となる権利関係を確定することができないものであった。すなわち、将来の給付請求権を訴訟物とするにあたり、前提となる事実関係や法律関係が未だ不透明であり、被告が負うべき義務の内容や範囲をあらかじめ特定することが不可能であったといえる。このような場合、義務者の防御権を著しく害するおそれがあり、また判決の執行力(確定判決の既判力の及ぶ範囲)に疑義が生じるため、あらかじめ請求する必要性を肯定することはできない。
結論
本件の将来の給付の訴えは、請求の基礎となる権利関係を確定できない将来の給付請求権を訴訟物とするものであり、不適法である。
実務上の射程
本判決は、将来の給付の訴えの適法性(訴えの利益)に関する判断基準を示している。実務上、不法占拠による賃料相当損害金の継続的な支払い(「明け渡しまで月額○円を支払え」等)のような定型的なケース以外で、発生が不確実な将来債権を請求する場合には、本判決に基づき、請求の基礎となる権利関係が口頭弁論終結時に確定しているかどうかが厳格に審査される。
事件番号: 昭和44(オ)1165 / 裁判年月日: 昭和45年2月27日 / 結論: 棄却
賃貸人が、借地上の賃借人所有の建物に対し占有移転禁止等の仮処分を執行したことにより、賃借人の借地の使用収益を妨げたとしても、そのために借地法一二条に基づく賃料増額請求が許されなくなるものではない。
事件番号: 昭和33(オ)345 / 裁判年月日: 昭和34年8月7日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】上告審において、原審で主張していなかった新たな事実上の主張を基礎として原判決の違法をいうことは、民事訴訟の手続上許されない。 第1 事案の概要:上告人(賃借人)は、被上告人(賃貸人)からなされた月額5,000円の延滞賃料の催告に基づく契約解除を争っていた。上告人は、上告審において、当該催告より以前…
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…
事件番号: 昭和34(オ)975 / 裁判年月日: 昭和38年2月21日 / 結論: 棄却
原告の土地明渡請求に対し、被告が第一審において右土地について賃借権を有する旨主張し、同審が右賃借権の存在を肯認した場合に、控訴審において被告が更に反訴として右賃借権存在確認の訴を提起するには、相手方たる原告の同意を要しないものと解するのが相当である。