原告の土地明渡請求に対し、被告が第一審において右土地について賃借権を有する旨主張し、同審が右賃借権の存在を肯認した場合に、控訴審において被告が更に反訴として右賃借権存在確認の訴を提起するには、相手方たる原告の同意を要しないものと解するのが相当である。
控訴審における反訴の提起について相手方の同意を要しないとされた事例。
民訴法382条,民訴法239条
判旨
控訴審において提起された反訴が、第一審で既に争点となっていた権利関係の確認を求めるものであり、相手方に審級の利益を失わせるおそれがない場合には、相手方の同意がなくてもその提起は適法である。
問題の所在(論点)
控訴審において、第一審の主要な争点であった権利関係につき確認を求める反訴を提起する場合、民事訴訟法300条1項(旧民訴法382条)に基づく相手方の同意を要するか。審級の利益を欠くか否かが問題となる。
規範
控訴審における反訴の提起(民事訴訟法300条1項)に相手方の同意を要する趣旨は、相手方から審級の利益を奪うことを防止する点にある。したがって、反訴の提起が相手方に第一審を失う不利益を与えるものではないと認められる特段の事情がある場合には、相手方の同意を得ることなく反訴を提起することが許される。
重要事実
本件土地の明渡しを求める本訴に対し、被告は当該土地の賃借権を主張して争った。第一審は、被告の賃借権を認めて原告の請求を棄却した。原告が控訴したところ、被告(被控訴人)は控訴審において、当該賃借権の存在確認を求める反訴を提起した。原告(控訴人)はこの反訴に対し、同意しない旨を表明した。
事件番号: 昭和36(オ)707 / 裁判年月日: 昭和37年8月3日 / 結論: 棄却
本訴は係争建物が原告所有のものであることを理由にして、右建物の収去を内容とする債務名義の執行の排除を求める第三者異議の訴であり、反訴は右建物が原告(反訴被告)のものであるとして原告に対しその収去を求めるものである場合は、右反訴は右本訴の請求と牽連関係があると認めて妨げない。
あてはめ
本件における反訴の内容は、第一審において既に原告の本訴請求に対する防御方法として主張され、かつ第一審裁判所がその存否を審理・判断した「賃借権の存在」の確認を求めるものである。このような場合、反訴の内容となる権利関係は既に第一審の審理の対象となっており、控訴審で改めて独立の訴えの形をとったとしても、原告にとって審理が不意打ちになることはなく、第一審を失う不利益があるとはいえない。よって、本件反訴の提起に原告の同意は不要である。
結論
控訴審における反訴の提起について、相手方に第一審を失う不利益を与えるものとは解されないため、相手方の同意を要しない。
実務上の射程
控訴審での反訴提起が「審級の利益」を害さないとされる典型例(本訴の防御方法として主張されていた権利の反訴化)を示す。実務上、相手方の同意を欠く場合でも『審級の利益を害さない』ことを理由に反訴の適法性を基礎付ける際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和50(オ)250 / 裁判年月日: 昭和52年10月14日 / 結論: 棄却
控訴審において当事者参加がなされた場合において、右参加の訴に対し参加被告が反訴を提起するには、参加人の同意を要しない。
事件番号: 昭和44(オ)915 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日 / 結論: 棄却
借地法の適用のある土地賃貸借の期間が、事実審の口頭弁論終結後約六年後に満了する場合において、貸主がその期間満了による賃貸土地の返還を求める将来の給付請求は、その請求の基礎となる権利関係を確定することができない請求権を訴訟物とするものであつて、不適法である。
事件番号: 昭和35(オ)1015 / 裁判年月日: 昭和38年5月9日 / 結論: 棄却
出征中の本人の所有財産管理の権限を与えられている者が右財産中の土地を代理権なく売却した場合に、原審認定の事情のもとでは、相手において代理権ありと信ずる正当の理由がある。
事件番号: 昭和31(オ)755 / 裁判年月日: 昭和32年6月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】権利濫用の抗弁は、その前提となる権利(賃借権等)の取得が認められない場合には、判断の対象とならない。また、控訴審で主張していない事実を前提とした判断遺脱の主張は、上告理由として認められない。 第1 事案の概要:上告人は、本件土地について賃借権を取得したと主張し、その上で権利濫用の抗弁を提出した。し…