賃貸人が、借地上の賃借人所有の建物に対し占有移転禁止等の仮処分を執行したことにより、賃借人の借地の使用収益を妨げたとしても、そのために借地法一二条に基づく賃料増額請求が許されなくなるものではない。
賃貸人の使用収益債務の一部不履行と賃料増額請求権
借地法12条
判旨
借地法12条(現借地借家法11条)に基づく賃料増額請求は将来に向かって客観的に相当な賃料額を定めるものであり、賃貸人の不当な仮処分執行等の事情は賃料増額の可否や算定において当然に斟酌されるものではない。
問題の所在(論点)
賃貸人が借地人の使用収益を不当に阻害したという事情が、借地法12条(現行借地借家法11条)に基づく賃料増額請求の可否、または増額後の賃料額の算定に影響を与えるか。
規範
賃料増額請求(借地法12条1項、現行借地借家法11条1項)は、法所定の事由がある場合に、将来に向かって「客観的に相当な賃料額」を定めるものである。したがって、賃貸人側の事情により借地人の使用収益が阻害されたとしても、それは別途損害賠償等により救済されるべき問題であり、賃料増額請求の当否や、増額後の相当賃料額の算定において当然に斟酌すべき事情とはならない。
重要事実
賃貸人(上告人)が借地人に対し賃料増額請求を行った。これに対し借地人は、賃貸人が借地上の建物について理由なく占有移転禁止等の仮処分を執行したため、建物の完全な利用や借地の使用収益が阻害されたと主張。このような事情がある以上、賃料増額請求は許されない、あるいは増額後の賃料算定において右事情を斟酌すべきであると争った。
事件番号: 昭和37(オ)445 / 裁判年月日: 昭和41年4月22日 / 結論: 棄却
借地権者が従前土地上に登記ある建物を所有している場合でも、借地権の申告に基づいて施行者が仮換地上に使用収益部分の指定をしなければ、仮換地上に使用収益権は生じない。
あてはめ
賃料増額請求権は、租税公課の増減や経済事情の変動等の客観的要因に基づき、適正な賃料への修正を求める権利である。仮に賃貸人が不当な仮処分によって借地人の使用収益を阻害したとしても、それは不法行為等の別個の法律問題として解決されるべきである。客観的な賃料相場の変動を反映させるべき増額請求の局面において、個別具体的な損害賠償的要素を混入させることは、客観的に相当な賃料額を定めるという制度の趣旨に照らして適切ではない。
結論
賃貸人の不当な占有移転禁止仮処分等の事情があっても、賃料増額請求は許され、また増額後の賃料額算定において右事情を当然に斟酌しなければならないものでもない。
実務上の射程
賃料増減額請求における「相当な賃料」の判断枠組みを示す。賃貸借当事者間の個人的な紛争や一時的な使用阻害などの事情は、客観的賃料額を左右する要因から排除されるという「客観説」の立場を明確にしている。答案上は、増減額請求の要件検討において、算定に含めるべき事情と含めるべきでない事情を切り分ける際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和55(オ)904 / 裁判年月日: 昭和56年12月4日 / 結論: 棄却
全部が建物所有のための賃貸借の目的となつている一筆の土地について仮換地の指定があり、賃借人が土地区画整理法八五条一項の規定によつてした賃借権の申告が右賃借権の存在を確認する裁判が未確定である等の理由で受理を留保されている場合において、右土地上の旧建物は土地区画整理事業の施行者により仮換地上に移築されており、仮換地の指定…
事件番号: 昭和36(オ)300 / 裁判年月日: 昭和37年2月20日 / 結論: 棄却
剣道術練習により生ずる騒音量が保険医療業及び脳神経系統に及ぼす影響についての鑑定のためには、必ずしも医学的学識を有する者のみが鑑定人として選任されなければならないものではない。
事件番号: 昭和45(オ)1003 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
否定(昭和三四年(オ)三二六号、同三六年三月七日第三小法廷判決・民集一五巻三号三六五頁参照)
事件番号: 昭和41(オ)1259 / 裁判年月日: 昭和42年2月24日 / 結論: 棄却
賃料が数次にわたつて値上げされたことや賃料が当該借地の固定資産税を上廻つていることは、一時使用のための賃貸借契約であると認定するについて妨げとなるものではない。