一 一区画の仮換地の一部を所有の意思をもつて所要の期間継続して占有した者は、従前の土地につき右占有部分に対応する部分が特定されていないときは、時効により従前の土地に対する共有持分権を取得するとともに、当該占有部分につき、共有持分権者の一人が現に排他的な使用収益権能を取得している場合と同様の使用収益権能を取得する。 二 所有の意思をもつて甲土地に対する仮換地の占有を継続した者がこれを乙土地に対する仮換地と誤信していた場合であつても、その者による甲土地についての時効取得が成立する。
一 一区画の仮換地の一部でこれに対応する従前の土地部分の特定がないものを所有の意志をもつて占有した場合における従前の土地の共有持分の時効取得及びこれに伴い右占有に係る土地について取得する使用収益権能 二 甲土地に対する仮換地を乙土地に対する仮換地であると誤信し所有の意志をもつて占有した者と甲土地の時効取得
民法162条,民法249条,土地区画整理法99条
判旨
仮換地の占有により時効取得の対象となるのは、当該仮換地に実際に対応する「従前の土地」の所有権または共有持分権であり、占有者が従前の土地を他人の土地と誤信していても時効取得の成否自体には影響しない。
問題の所在(論点)
仮換地の占有者が、当該仮換地に対応する従前の土地(甲)を、それとは別の土地(乙)であると誤信して占有を継続した場合、実際に対応する従前の土地(甲)について所有権を時効取得できるか。
規範
1. 仮換地を所有の意思をもって継続占有した者は、時効により、当該仮換地に対応する「従前の土地」の所有権を取得し、これに伴い仮換地上の使用収益権能を取得する。 2. 占有部分が一区画の仮換地の一部である場合、従前の土地のうち対応部分が特定されていなくとも、その面積割合に応じた共有持分権を時効取得する。 3. 時効取得の対象は、仮換地に実際に対応する従前の土地であり、占有者が対象地を誤信していても、権利取得の成否自体には影響しない。
事件番号: 昭和43(オ)795 / 裁判年月日: 昭和46年11月26日 / 結論: 棄却
特別都市計画法一三条所定の換地予定地の指定通知が従前の土地の所有者に対してなされたのちにおいては、当該換地予定地を占有するのでなければ、従前の土地を占有したからといつて、その従前の土地の所有権地上権または賃借権を時効によつて取得することはできない。
重要事実
大阪市長は、被上告人所有の土地(e番地等)の仮換地として、本件土地を含む一画を指定した。一方、上告人は、本件土地(仮換地)を「m番地の土地(他人の土地)の一部」であると誤信し、昭和37年頃から建物を所有して占有を継続した。被上告人が仮換地の使用収益権に基づき建物収去土地明渡しを求めたところ、上告人は、本件土地の占有により「m番地の土地の一部」を時効取得したため、本件土地(仮換地)の使用収益権も有すると抗弁した。
あてはめ
上告人は、本件土地(仮換地)を、実際にはe番地等の土地に対応するものであるにもかかわらず、m番地の土地に対応するものと誤信して占有していた。しかし、時効制度の趣旨は永続した事実状態の尊重にあり、占有者が目的物の同一性を誤認していても、現に占有している仮換地に対応する「真の従前の土地」との結びつきは否定されない。したがって、上告人が本件土地(仮換地)を占有し続けた以上、それが実際に対応するe番地等の土地の共有持分権を時効取得する余地があり、占有者の誤信のみを理由に時効取得の抗弁を排斥することはできない。
結論
仮換地の占有により時効取得されるのは、当該仮換地に実際に対応する従前の土地の所有権(または持分権)である。占有者の誤信は過失の有無に影響し得るにとどまり、権利取得の成否自体は妨げられないため、更なる審理を尽くすべきである。
実務上の射程
土地区画整理法における仮換地と従前の土地の法的連続性を前提とした判断である。答案上では、仮換地の占有が「どの土地」の時効取得に繋がるかを特定する際の規範として活用する。特に、対象土地の誤信(客体錯誤)があっても、現実に占有している仮換地に対応する真の従前の土地について時効取得を認めるべきとする論理で使用する。
事件番号: 昭和61(オ)956 / 裁判年月日: 昭和63年1月26日 / 結論: 破棄自判
一 隣接する甲乙両土地上にまたがつて存在する建物の敷地のうち甲土地について法定地上権が成立し、建物の登記上、所在地番として一筆の土地の地番が表示され、その所在地番及び構造が実際と相違していても、右地番が大部分の敷地である乙土地の地番と多少相違するにとどまり、登記の表示全体において右建物の同一性を認識できる程度の軽微な相…
事件番号: 昭和43(オ)381 / 裁判年月日: 昭和43年9月24日 / 結論: 棄却
仮換地の特定の一部分につき売買契約を締結したが、その部分が従前の土地のどの部分に対応するかについて合意がなく、かつ、これを確定することができないときは、仮換地全体の面積に対する当該部分の面積の比率に応じた従前の土地の共有持分につき売買契約が締結され、その持分について処分の効果が生ずるとともに、従前の土地についての持分に…
事件番号: 昭和44(オ)915 / 裁判年月日: 昭和44年11月13日 / 結論: 棄却
借地法の適用のある土地賃貸借の期間が、事実審の口頭弁論終結後約六年後に満了する場合において、貸主がその期間満了による賃貸土地の返還を求める将来の給付請求は、その請求の基礎となる権利関係を確定することができない請求権を訴訟物とするものであつて、不適法である。