一 隣接する甲乙両土地上にまたがつて存在する建物の敷地のうち甲土地について法定地上権が成立し、建物の登記上、所在地番として一筆の土地の地番が表示され、その所在地番及び構造が実際と相違していても、右地番が大部分の敷地である乙土地の地番と多少相違するにとどまり、登記の表示全体において右建物の同一性を認識できる程度の軽微な相違でたやすく更正登記が可能である場合には、右地上権は、建物保護に関する法律一条による対抗力を有する。 二 建物の競売により法定地上権を取得した者は、その対抗要件を具備しない間に敷地の譲受人が所有権移転登記を経由しても、その後更に敷地の所有権を取得した者が所有権移転登記を経由するまでの間に建物につき所有権保存登記を経由した場合には、右敷地転得者に対して地上権の取得を対抗することができる。
一 隣接する二筆の土地上にまたがつて存在し登記上の所在地番及び構造が実際と相違する建物の敷地のうち一筆の土地について法定地上権が成立した場合と建物保護に関する法律一条による対抗力 二 建物の競売により法定地上権を取得した者が敷地譲受人による所有権移転登記の経由後に建物の所有権保存登記を経由した場合と敷地転得者に対する地上権の対抗
建物保護に関する法律1条,民法177条,民法388条
判旨
建物の表示に多少の誤りがあっても、登記の表示全体から建物の同一性が認識でき、容易に更正可能であれば、旧建物保護法1条(現借地借家法10条1項)の対抗力を有する。また、対抗要件具備前に土地が転売された場合でも、その後の土地取得者との関係で新たに対抗要件を具備すれば、借地権を対抗できる。
問題の所在(論点)
1. 建物の所在地番に誤りがある登記が、建物保護法1条(借地借家法10条1項)の対抗要件として有効か。 2. 借地権者が対抗要件を具備する前に土地が譲渡された場合、その後の譲受人との関係で改めて対抗要件を具備し、借地権を対抗できるか。
規範
1. 建物の登記において所在地番や構造の表示が実際と相違していても、登記の表示全体において建物の同一性を認識できる程度の軽微な相違であり、たやすく更正登記が可能であるときは、同登記は対抗力を有する。 2. 法定地上権の取得者が対抗要件を具備しない間に土地所有権が転々と譲渡された場合、地上権者は未登記のままでは先の土地取得者に対抗できないが、その後、現在の土地所有権者が取得する前に建物登記(対抗要件)を具備すれば、その者に対して地上権を対抗できる。
事件番号: 昭和53(オ)204 / 裁判年月日: 昭和56年6月4日 / 結論: その他
一 一区画の仮換地の一部を所有の意思をもつて所要の期間継続して占有した者は、従前の土地につき右占有部分に対応する部分が特定されていないときは、時効により従前の土地に対する共有持分権を取得するとともに、当該占有部分につき、共有持分権者の一人が現に排他的な使用収益権能を取得している場合と同様の使用収益権能を取得する。 二 …
重要事実
Dは甲乙両地にまたがる本件建物を所有していたが、抵当権実行によりEが建物を競落し、甲地について法定地上権を取得した。Eは建物登記(旧登記)を経由したが、地番表示が実際と大きく異なる誤りがあった。甲地はF、Gへと転売され登記も移転。その後、Eを相続したA1が、旧登記の存在を知らずに新たな保存登記(新登記)を経由した。この新登記も地番に若干の相違(「c番1」を「c番イ」とする等)があったが、建物の大部分の敷地と元番を共通にしていた。その後、被上告人(土地買主)がGの相続人から甲地を買い受け、登記を備えたため、A1に対し建物収去土地明渡を求めて提訴した。
あてはめ
1. 本件新登記は、所在地番の表示が大部分の敷地の地番と元番を共通にしており、表示全体から建物の同一性を認識できる程度の軽微な相違といえる。また、たやすく更正登記も可能であるから、本件建物の登記として有効であり、対抗力を有する。 2. 確かにEは対抗要件具備前に土地を取得したFやGには地上権を対抗できなかったが、これにより地上権が確定的に消滅するわけではない。被上告人が土地を取得するより前に、A1が新登記という対抗要件を具備した以上、被上告人との関係では借地権を対抗することができる。
結論
上告人A1は本件土地につき建物所有を目的とする地上権を有しており、対抗要件(新登記)を具備した後の土地取得者である被上告人に対し、これに対抗できる。
実務上の射程
借地上の建物登記による対抗力の判断基準として、地番の軽微な誤りがあっても同一性が識別可能なら保護されることを示した。また、借地権の対抗関係が相対的に決まる(転得者との関係で後から対抗要件を備えれば勝てる)ことを認めた重要判例である。
事件番号: 昭和30(オ)56 / 裁判年月日: 昭和31年7月17日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の不法占有者は、民法177条にいう「第三者」には該当せず、所有者は登記がなくても当該占有者に対して所有権を主張できる。また、換地予定地の特定は、地番の表示がなくても所在位置を図面等により示す方法で足りる。 第1 事案の概要:被上告人が所有権を主張する係争土地(換地予定地)について、上告人らが…
事件番号: 昭和44(オ)1030 / 裁判年月日: 昭和45年3月26日 / 結論: 棄却
賃借権の設定された土地の上の建物についてなされた登記が、錯誤または遺漏により、建物所在地番の表示において実際と多少相違していても、建物の種類、構造、床面積等の記載とあいまち、その登記の表示全体において、当該建物の同一性を認識できる程度の軽微な誤りであり、ことにたやすく更正登記ができるような場合には、建物保護に関する法律…
事件番号: 昭和58(オ)513 / 裁判年月日: 昭和59年10月8日 / 結論: 破棄差戻
地上権者が地上権の目的土地を第三者に賃貸したのちに地上権設定者と地上権者とが合意で地上権設定契約を解除した場合、地上権設定者は、原則として、右第三者(賃借人)に対し、右合意解除により地上権者と賃借人との間の賃貸借契約が終了したと主張することはできないが、地上権設定者が、地上権者の債務不履行を理由として民法二六六条一項、…
事件番号: 昭和46(オ)1158 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 棄却
土地の売買契約において、買主が代金を五年間にわたつて分割支払い、その完済後売主が所有権移転登記をなし、その支払期間中の公租公課を買主が負担する旨約された場合には、右買主の公租公課負担義務は付随義務とはいえず、売主はこの義務不履行を理由に契約を解除することができる。