地上権者が地上権の目的土地を第三者に賃貸したのちに地上権設定者と地上権者とが合意で地上権設定契約を解除した場合、地上権設定者は、原則として、右第三者(賃借人)に対し、右合意解除により地上権者と賃借人との間の賃貸借契約が終了したと主張することはできないが、地上権設定者が、地上権者の債務不履行を理由として民法二六六条一項、二七六条所定の地上権の消滅請求又は法定の解除権を行使する旨の意思表示をし、これによつて地上権設定契約及びこれを基礎とする右賃貸借契約が既に終了しているといえる事実関係のあるときには、合意解除されても、地上権設定者が、これに応ずるに当たつて、右の賃貸借契約の終了によつて受けうべき利益を放棄したといえる事情のあるときは格別、そうでない限り、地上権設定者は、合意解除により地上権者と賃借人との間の賃貸借契約も終了した旨主張することができる。
地上権者が地上権設定契約の合意解除をもつて地上権者からの当該土地の賃借人に対抗しうる場合
民法266条1項,民法276条,民法398条,民法545条1項
判旨
地上権の合意解除は、原則として転借人に対抗できないが、地上権消滅請求権を行使し得る等の債務不履行がある場合には、格別の事情がない限り対抗できる。
問題の所在(論点)
地上権の合意解除がなされた際、地上権者に債務不履行があり消滅請求権を行使し得る状況であった場合、設定者はその解除を転借人に対抗できるか。また、「格別の事情」の判断基準が問題となる。
規範
地上権者(賃貸人)と地上権設定者(オーナー)との間で地上権設定契約を合意解除した場合、設定者は原則として転借人に対し、合意解除による賃貸借の終了を主張できない。しかし、設定者が地上権者の債務不履行を理由とする地上権消滅請求権(民法266条1項、276条)や解除権を行使し得る事実関係がある場合には、合意解除という形式をとっても、設定者が賃貸借終了による利益を放棄したといえる「格別の事情」がない限り、転借人に賃貸借の終了を主張できる。
事件番号: 昭和54(オ)1398 / 裁判年月日: 昭和58年1月20日 / 結論: 破棄差戻
建物所有を目的とする借地契約の更新拒絶に正当の事由があるかどうかを判断するにあたつては、借地契約が当初から建物賃借人の存在を容認したものであるか又は実質上建物賃借人と借地人とを同一視することができるなどの特段の事情の存在する場合のほかは、建物賃借人の事情を借地人側の事情として斟酌することは許されない。
重要事実
地上権者Dは、設定者E(後に上告人が承継)から土地を借り、その一部を被上告人らに転貸していた。Dが地代の支払を2年以上怠ったため、Eは地上権消滅請求に基づき土地明渡訴訟を提起し、一審で全部勝訴した。控訴審において、Dが建物の収去・退去や所有権放棄を認め、土地の一部を返還し、残部を第三者Fに賃貸するといった、上告人に極めて有利な内容の訴訟上の和解(本件合意解除を含む)が成立した。これに対し、転借人である被上告人らが、合意解除を対抗できないと主張して争った。
あてはめ
本件では、Dに2年分以上の地代不払という債務不履行があり、上告人は消滅請求権を行使し得る状態にあった。和解の内容も、収去請求や土地返還など上告人に極めて有利なものであり、債務不履行による終了と同様の実態を有する。建物所有権の帰属や地代値上げをめぐる紛争が存在していたとしても、そのこと自体から、上告人が賃貸借終了による利益を放棄した(格別の事情がある)とはいえない。したがって、消滅請求の当否を判断せずに合意解除の対抗力を否定した原審の判断は不当である。
結論
設定者は、消滅請求が認められる客観的事実がある限り、格別の事情がない限り合意解除を転借人に対抗できる。本件では格別の事情があるとは認められず、原判決は破棄・差し戻されるべきである。
実務上の射程
対抗関係の一般論(民法398条、538条の類推)を前提としつつ、実質的に債務不履行解除と同視できる場合の例外を認める射程を持つ。答案では「信義則」や「権利の濫用」の文脈ではなく、契約終了の実態を重視した規範として論じるのが適切。賃貸借の合意解除の事案(最判昭37.2.1)と並び、地上権においても同様の法理が適用されることを確認する際に用いる。
事件番号: 昭和54(オ)211 / 裁判年月日: 昭和58年11月10日 / 結論: 棄却
都市公園法附則四項及び七項に基づく損失補償は、従前の使用許可による権利の喪失と同時履行の関係に立つものではなく、右補償がされなくとも右権利喪失の効果は生じると解すべきである。
事件番号: 昭和52(オ)1399 / 裁判年月日: 昭和53年9月7日 / 結論: 破棄差戻
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸借契約が賃借権の無断譲渡を理由として解除されたときは、その後に賃料相当損害金の不払が生じても、借地法一〇条に基づく建物買取請求権は消滅しない。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…