第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得した場合において、賃貸借契約が賃借権の無断譲渡を理由として解除されたときは、その後に賃料相当損害金の不払が生じても、借地法一〇条に基づく建物買取請求権は消滅しない。
賃借権の無断譲渡を理由とする賃貸借契約の解除後の賃料相当損害金の不払と借地法一〇条に基づく建物買取請求権
借地法10条
判旨
賃借権の無断譲渡を理由に賃貸借契約が解除された場合、その後に賃料相当損害金の不払が生じても、建物買取請求権(借地借家法14条、旧借地法10条)は消滅しない。
問題の所在(論点)
賃借権の無断譲渡を理由に賃貸借契約が解除された後、賃料相当損害金の不払という事情が生じた場合、借地法10条(現行借地借家法14条)に基づく建物譲受人の建物買取請求権の行使は認められるか。
規範
第三者が借地上の建物を取得したが賃貸人が譲渡を承諾しない場合、賃料不払を理由に賃貸借契約が解除されたときは、建物買取請求権は消滅する。しかし、無断譲渡を理由として既に契約が解除された場合には、賃貸人はそれ以後の賃料を請求できず、その後に賃料相当損害金の不払が生じても、これを「賃料の不払」と同視して契約を解除する余地はない。したがって、無断譲渡による解除後に不払を理由とする解除の意思表示がなされても、建物買取請求権は消滅しない。
重要事実
賃借人Dは賃貸人Bから土地を借り、その上に建物を所有していたが、Bに無断で建物を上告人に譲渡した。Bは、Dに対し無断譲渡を理由として契約解除の意思表示を行い、契約は終了した。Dは解除後一定期間の賃料を供託したが、その後の期間については不払となった。Bはさらに賃料不払を理由とする解除の意思表示を重ねて行った。その後、上告人がBに対し建物買取請求権を行使したところ、Bは不払による解除があるため同請求は認められないと主張した。
事件番号: 昭和42(オ)1369 / 裁判年月日: 昭和43年3月29日 / 結論: 棄却
賃借権の無断譲渡が賃貸人に対する背信行為と認めるに足りない旨の特段の事情の存在については、賃借人において、主張・立証すべきである。
あてはめ
本件では、無断譲渡を理由とする解除により、契約は昭和49年3月6日に既に終了している。そのため、賃貸人Bはそれ以降の「賃料」を請求する権利を失い、生じているのは「賃料相当損害金」の支払義務にすぎない。損害金の不払があっても、既に終了した契約を改めて「賃料不払」を理由に解除することは法理上不可能である。よって、賃料不払解除を前提として建物買取請求権を否定することはできず、無断譲渡解除の事案として同請求権の行使の可否を判断すべきである。
結論
無断譲渡解除後に生じた賃料相当損害金の不払を理由に、建物買取請求権を否定することはできない。本件における建物買取請求権行使の効力を肯定し、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
建物買取請求権が誠実な借地権者の保護を目的とすることから、賃料不払(債務不履行)による解除の場合には否定されるという判理を前提としつつ、無断譲渡解除の場合にはなお請求権が残存することを明示した。答案では、買取請求の要件検討において、解除原因が「賃料不払」か「無断譲渡」かを厳格に区別して論じる際に用いる。
事件番号: 昭和33(オ)518 / 裁判年月日: 昭和35年9月20日 / 結論: 棄却
一 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された場合、土地賃貸人は、特段の事情がないかぎり、右買取請求権行使以前の期間につき賃料請求権を失うものではないけれども、これがため右期間中は建物取得者の敷地不法占有により賃料相当の損害を生じないとはいい得ない。 二 借地法第一〇条の建物買取請求権が行使された後、建物取得者は買取代…
事件番号: 昭和39(オ)1214 / 裁判年月日: 昭和41年3月1日 / 結論: 棄却
第三者が賃借土地の上に存する建物の所有権を取得して賃借土地の転貸を受けた場合において、賃貸人が転貸を承諾しない間に賃貸借が賃料不払のため解除されたときは、借地法第一〇条に基づく第三者の建物買取請求権は、これによつて消滅するものと解すべきである。
事件番号: 昭和38(オ)1462 / 裁判年月日: 昭和39年6月26日 / 結論: 棄却
賃貸人たる地主は、借地人に対し賃料請求権を有するとしても、いまだ借地人から右賃料の支払を受けていないかぎり、借地権の無断譲受人に対し賃料相当の損害賠償請求ができる。
事件番号: 昭和58(オ)513 / 裁判年月日: 昭和59年10月8日 / 結論: 破棄差戻
地上権者が地上権の目的土地を第三者に賃貸したのちに地上権設定者と地上権者とが合意で地上権設定契約を解除した場合、地上権設定者は、原則として、右第三者(賃借人)に対し、右合意解除により地上権者と賃借人との間の賃貸借契約が終了したと主張することはできないが、地上権設定者が、地上権者の債務不履行を理由として民法二六六条一項、…