(消極)
民訴規則五三条は憲法三二条に違反するか
憲法32条,民訴規則53条
判旨
憲法32条は、裁判所において裁判を受ける権利を保障するが、裁判所の組織、権限、審級等の具体的制度設計は、憲法81条等の特段の制限がない限り、立法政策に委ねられている。したがって、上告理由の記載不備を理由とする原裁判所による上告却下決定の制度も、憲法32条に違反しない。
問題の所在(論点)
上告理由の記載不備を補正しない場合に、原裁判所が決定で上告を却下することを定めた規定(民訴規則53条等)は、憲法32条(裁判を受ける権利)に違反するか。
規範
憲法32条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利があることを規定したに過ぎない。いかなる裁判所において裁判を受けるべきかという裁判所の組織、権限、審級等については、憲法81条(違憲審査制)等の特段の制限がある場合を除き、すべて法律において諸般の事情を考慮して決定すべき立法政策の問題である。
重要事実
抗告人が提起した上告について、その上告理由の記載が民事訴訟規則46条に違反することが明らかであった。これに対し、原裁判所は同規則53条および当時の民事訴訟法399条1項2号後段に基づき、欠陥の補正を命じた。しかし、所定の期間内に補正がなされなかったため、原裁判所は決定をもって上告を却下した。これに対し、抗告人は、原裁判所による却下を認める当該規則等の規定が、憲法32条の裁判を受ける権利に違反すると主張して抗告した。
事件番号: 昭和34(ク)173 / 裁判年月日: 昭和34年6月9日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民事訴訟法399条1項2号(旧法)の規定は憲法32条に違反せず、裁判を受ける権利を侵害するものではない。 第1 事案の概要:抗告人が、旧民事訴訟法399条1項2号の規定を憲法32条(裁判を受ける権利)違反であると主張し、あわせて憲法12条(自由・権利の保持責任)、14条(法の下の平等)違反を理由に…
あてはめ
憲法32条の保障は、具体的な審級制度や手続の細目までを直接規定するものではない。上告理由の記載が規則に違背し、かつ補正命令に従わない場合に上告を却下する制度は、適正かつ迅速な裁判を実現するための合理的な手続上の制約である。このような審級等の具体的運用に関する定めは、立法府に広範な裁量が認められる「立法政策の問題」に属する。したがって、法的な手続保障を欠くものではなく、裁判を受ける権利の本質を侵害するものとはいえない。
結論
民訴規則53条等は憲法32条に違反しない。したがって、原裁判所による上告却下決定は正当であり、本件抗告は棄却される。
実務上の射程
裁判を受ける権利(憲法32条)の性質が「手続的保障」に留まり、具体的な制度設計(審級制の有無や上告制限、手続的要件)は立法裁量に広く委ねられることを示す基本判例である。司法試験の答案上では、上告制限や提訴期間の制限、調停前置主義などの合憲性を論ずる際の規範として活用できる。
事件番号: 昭和34(ク)84 / 裁判年月日: 昭和37年1月22日 / 結論: 棄却
上告理由書を原裁判所に提出せしめ、提出期間徒過の場合に原審において上告却下の裁判をすることは、憲法第三二条に違反しない。
事件番号: 昭和36(ク)176 / 裁判年月日: 昭和41年3月14日 / 結論: 棄却
民訴規則第五〇条の規定は憲法第三二条に違反しない。
事件番号: 昭和47(ク)311 / 裁判年月日: 昭和47年11月9日 / 結論: 棄却
民訴法五四九条四項、五四七条二項による裁判について不服申立をなしえない旨の判断をしても、憲法三二条に違反しない。