上告理由書を原裁判所に提出せしめ、提出期間徒過の場合に原審において上告却下の裁判をすることは、憲法第三二条に違反しない。
上告理由書を原裁判所に提出せしめ、期間徒過の場合に上告却下決定をすることは憲法第三二条に違反しないか
憲法32条,民訴法398条,民訴法399条
判旨
憲法32条の裁判を受ける権利は、特定の組織、権限、審級による裁判を保障するものではなく、上告理由書の不提出による原裁判所での上告却下規定も合憲である。
問題の所在(論点)
上告理由書を提出しない場合に、原裁判所が決定で上告を却下できるとする法規定は、憲法32条の「裁判を受ける権利」を侵害するか。
規範
憲法32条は、何人も裁判所において裁判を受ける権利があることを規定したにとどまり、裁判所の組織、権限、審級等については、立法府が諸般の事情を考慮して決定すべき立法政策の問題である。したがって、合理的な立法目的に基づく訴訟手続上の制限は、憲法81条等に抵触しない限り、同条に違反しない。
重要事実
抗告人は、上告理由書を適法な期間内に提出しなかったとして、当時の民事訴訟法に基づき原裁判所によって上告を却下された。これに対し抗告人は、原裁判所が決定をもって上告を却下する改正規定は、最高裁判所において裁判を受ける権利を侵害し、憲法32条に違反するものであると主張して抗告を申し立てた。
事件番号: 昭和32(ク)200 / 裁判年月日: 昭和32年10月10日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】憲法32条の裁判を受ける権利は審級等の具体的内容を法律に委ねているため、上告理由書を提出しなかった場合に裁判所が決定で上告を却下する規定は合憲である。また、上告理由は書面自体に記載すべきであり、他事件の上告理由書を援用することは許されない。 第1 事案の概要:抗告人(上告人)は、民事訴訟法が定める…
あてはめ
憲法32条は、いかなる裁判所において裁判を受けるべきかという審級構造までを固定的に保障したものではない。当時の民訴法改正により、上告理由書の提出先を原裁判所とし、不提出の場合に原裁判所が却下決定を行うものとしたことは、訴訟経済や審理の迅速化を図る立法政策の範囲内といえる。したがって、当該手続規定によって最高裁判所の判断を仰げなくなったとしても、それは適法な手続上の不備に基づく帰結であり、裁判を受ける権利の不当な侵害にはあたらない。
結論
上告理由書不提出を理由とする原裁判所の却下規定は合憲である。本件抗告は理由がなく、棄却されるべきである。
実務上の射程
裁判を受ける権利(憲法32条)の性質が「立法政策の委ねられた権利」であることを示す。司法試験においては、審級制の否定や上告受理制度の合憲性、その他訴訟手続の合理的な制限を論ずる際の基本原則として引用可能である。
事件番号: 昭和32(ク)222 / 裁判年月日: 昭和32年12月17日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】裁判官の忌避の申立てを却下する決定に対しては、刑事訴訟法432条、428条2項により、特別抗告をすることはできない。 第1 事案の概要:裁判官に対する忌避の申立てについて、裁判所がこれを却下する決定を行った。これに対し、抗告人が最高裁判所に対して抗告(特別抗告)を申し立てた事案である。 第2 問題…
事件番号: 昭和40(ク)328 / 裁判年月日: 昭和42年3月6日 / 結論: 棄却
民訴法第四一九条ノ二、裁判所法第七条第二号の規定は、憲法第三二条に違反しない。
事件番号: 昭和28(ク)145 / 裁判年月日: 昭和28年6月25日 / 結論: 却下
【結論(判旨の要点)】最高裁判所に対する抗告は、民訴法419条の2(現行330条等に対応)に定められた憲法違反の判断が含まれる場合に限られ、単なる手続規定の違反を憲法違反と称して主張することは適法な抗告理由とならない。 第1 事案の概要:抗告人は、原決定が憲法32条(裁判を受ける権利)に違反すると主張して最高裁判所に抗…
事件番号: 昭和31(オ)522 / 裁判年月日: 昭和32年9月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】事実認定は裁判所の裁量権の範囲に属する事項であり、原審がその裁量権の範囲内で行った事実認定を不当として法令違反を主張することは、適法な上告理由にはならない。 第1 事案の概要:上告人らは、原審(控訴審)が行った事実認定には誤りがあり、不当であると主張した。その上で、当該事実認定を前提とする原審の判…