手形債務者は、原因債務が時効消滅したことを理由として、原因関係上の当事者たる手形所持人からの手形金請求を拒むことができる。
原因債務の時効消滅と手形抗弁
手形法17条,民法173条1号
判旨
原因関係上の債権が消滅時効により消滅した場合、債務者は当該事由をもって手形金の支払請求を拒むことができる。
問題の所在(論点)
手形の原因関係である売掛代金債権が消滅時効により消滅した場合、債務者は手形金の請求に対して当該消滅の事実を抗弁として主張できるか。
規範
原因関係に基づき手形が振り出された場合、原因債権が消滅時効により消滅したときは、手形の振出人は人的抗弁として所持人(原因関係の当事者)からの手形金請求を拒絶することができる。
重要事実
上告会社は、被上告人Bに対し売掛代金債権を有していた。その支払のために本件為替手形が授受されたが、本訴提起前に、原因関係である売掛代金債権について、当時の民法173条(旧短期消滅時効)所定の2年の時効期間が満了した。
あてはめ
本件では、上告会社から被上告人Bに対する売掛代金債権が、本訴提起前に2年の消滅時効の満了により消滅している。手形債権は原因債権の支払のために存在しているものであるから、原因債権が消滅した以上、債務者はその消滅をもって手形債権の行使を拒むことができる。したがって、被上告人Bは時効消滅の事由をもって上告会社からの請求を拒絶し得ると解される。
結論
被上告人は売掛代金債権の消滅時効を理由に本件為替手形金の請求を拒むことができる。
実務上の射程
手形授受の直接の当事者間において、原因債権が消滅(時効・弁済等)した場合には人的抗弁として手形金請求を拒めることを示す基本的な判例である。改正民法下でも消滅時効の法理は同様に適用される。答案上は、手形債権と原因債権の関連性を論じる際の前提として活用する。
事件番号: 昭和38(オ)453 / 裁判年月日: 昭和40年4月13日 / 結論: 棄却
約束手形上の権利が時効によつて消滅した場合において、それが支払確保のために振り出された手形であるかぎり、右時効消滅以前に原因債権の消滅時効が完成していても、受取人から振出人に対する利得償還請求権は発生しない。
事件番号: 昭和33(オ)638 / 裁判年月日: 昭和35年2月11日 / 結論: 棄却
書替前の旧手形を取得した際に人的抗弁事由の存在を知らなかつた者に対しては、書替後の新手形について悪意の抗弁を対抗することはできない。