為替手形の支払呈示期間経過後における支払のための呈示は、支払地内にある手形の主たる債務者の営業所または住所においてすることを要し、支払場所に呈示しても、手形債務者を遅滞に付する効力を有しない。
為替手形の支払呈示期間経過後に支払場所にした呈示の効力
手形法1条,手形法4条,手形法38条,商法516条2項,商法517条
判旨
手形に記載された支払場所の効力は、原則として支払呈示期間内に限定される。同期間経過後は、支払地における主たる債務者の営業所または住所において支払の呈示をしなければ、債務者を履行遅滞に陥らせることはできない。
問題の所在(論点)
手形法上の「支払場所」の記載の効力は、支払呈示期間経過後も存続するか。また、期間経過後に記載された支払場所へ呈示したことにより、主たる債務者を履行遅滞に付することができるか。
規範
支払場所(手形法4条、27条)の記載は、支払呈示期間内における支払についてのみ効力を有する。期間経過後は、手形支払の本則に立ち返り、支払地内における主たる債務者の営業所または住所が支払場所となる。したがって、呈示期間経過後に「手形上の支払場所」へ呈示しても、適法な支払呈示とは認められず、債務者を履行遅滞に付する効力を有しない。これは、債務者が時効まで資金を固定される不利益を回避し、資金活用の合理性を図る趣旨に基づく。
重要事実
本件為替手形の所持人(被上告人)は、手形の支払呈示期間が経過した後の昭和36年1月11日に、手形面に記載された「支払場所」において支払の呈示を行った。これに対し、手形の主たる債務者(上告人)は、当該呈示では履行遅滞に陥らないと主張して、呈示翌日からの遅延損害金の支払義務を争った。なお、債務者の営業所または住所において呈示された事実は認められなかった。
あてはめ
手形は本来、呈示期間内の支払を予定して振り出されるものであり、支払場所の記載もその正常な経過を前提とする。期間経過後も支払場所の効力を認めると、債務者はいつ現れるか不明な所持人のために常に資金を保持せねばならず、酷である。本件において、被上告人が呈示した場所は手形記載の支払場所であるが、呈示日は期間経過後である。この場合、支払場所の記載は効力を失っており、適法な呈示は債務者の営業所または住所になされるべきであった。したがって、記載された支払場所への呈示をもって上告人を履行遅滞に付すことはできない。
結論
支払呈示期間経過後の「支払場所」への呈示は不適法であり、遅延損害金の起算点とはならない。本件では、訴状等の送達によりはじめて遅滞に陥ったものと解すべきである。
実務上の射程
主たる債務者(引受人、振出人)の責任に関する重要判例。答案では「支払呈示期間経過後の主たる債務者に対する利息・遅延損害金の請求」が問われた際、支払呈示の適法性を判断する規範として用いる。遡求権の問題とは区別して論じる必要がある。
事件番号: 昭和31(オ)529 / 裁判年月日: 昭和33年3月7日 / 結論: 棄却
白地手形による支払のための呈示は無効であり、その呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものではない。