判旨
手形所持人の居宅が支払場所と指定されている場合、所持人が満期日に支払場所で手形を所持し呈示の準備をして待機していれば、振出人が現れず現実の呈示ができなくても、呈示があったのと同一の効果が生じる。
問題の所在(論点)
手形の支払場所が所持人の居宅である場合において、債務者が出頭しなかったために現実の呈示ができなかったとき、支払呈示があったとみなすことができるか。手形法38条1項の「呈示」の意義が問題となる。
規範
手形の支払呈示(手形法38条1項)は、原則として債務者に対し現実に手形を提示して行う必要がある。しかし、手形に記載された支払場所が所持人の居宅である場合には、所持人が満期日に当該場所において手形を所持し、いつでも呈示できる準備を整えて支払を待機していれば、振出人が出頭しないために現実の呈示が困難であっても、呈示があったのと同一の法的効果を認めるのが相当である。
重要事実
手形所持人(被上告人)は、振出人(上告人)から真正に成立した手形を取得した。当該手形の支払場所は被上告人(所持人)の居宅として指定されていた。満期日当日、被上告人は支払場所である自邸において本件手形を所持し、支払を待っていたが、振出人である上告人は当該場所に出頭しなかったため、現実の手形呈示は行われなかった。
あてはめ
本件では、手形の支払場所が被上告人宅とされており、反証のない限り、所持人である被上告人は満期日に同所において手形を所持し、呈示の準備をして待機していたものと認められる。このような状況下で、振出人である上告人が支払場所に出頭しなかったことは、債務者側の事情により現実の呈示を妨げたものといえる。したがって、現実の呈示を欠く場合であっても、呈示があったのと同一の効果を認めるべきである。
結論
所持人が支払場所で呈示の準備をして待機していた以上、振出人の不出頭により現実の呈示ができなくても、呈示があったのと同一の効果が生じる。
実務上の射程
支払場所が所持人の営業所や居宅である場合に限定して適用される射程を持つ。振出人の遅滞責任や遡求権保全の文脈で、現実の呈示を要するか否かが争点となる答案において、信義則や呈示の目的(支払機会の提供)を背景とした例外的な処理として活用できる。
事件番号: 昭和36(オ)1108 / 裁判年月日: 昭和37年4月6日 / 結論: 棄却
被裏書人欄のおよび裏書の日附欄白地の手形所持人は、右白地を補充しないで権利を行使できる。