白地手形による支払のための呈示は無効であり、その呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものではない。
白地手形による支払のための呈示の効力
手形法38条,手形法53条,手形法10条
判旨
白地手形は要件補充がなされるまで未完成の手形であり、受取人欄が白地のままなされた支払呈示は無効である。また、呈示期間経過後の補充によって、当該呈示が遡及的に有効となることもない。
問題の所在(論点)
受取人欄が白地のままなされた支払呈示の効力、および呈示期間経過後の補充による当該呈示の治癒(遡及的有効化)の成否が問題となる。
規範
白地手形は、後日手形要件の記載が補充されてはじめて完全な手形となる未完成の手形である。したがって、補充がなされるまでは手形上の権利を行使しても効力を生じない。また、補充により署名者が手形上の責任を負うのは補充の時からであって、白地手形行為の時に遡るものではない。呈示期間経過後の補充によって、過去の無効な呈示が遡及的に有効になることも認められない。
重要事実
上告人は、受取人(指図人)欄が白地である本件為替手形について、支払のための呈示を行った。その後、手形の呈示期間が経過した後に受取人欄の補充を行った上で、被上告会社に対して遡及権の行使として手形金の支払を請求した。
あてはめ
本件では、支払呈示の時点で受取人欄が白地であった。白地手形は補充前は未完成の手形にすぎないため、この時点での呈示は権利行使としての効力を有さず無効である。また、上告人は呈示期間経過後に白地を補充しているが、手形責任の発生時期は補充時を基準とすべきであり、遡及効は認められない。したがって、適法な呈示期間内に有効な呈示がなされたとはいえない。
結論
受取人欄が白地のままなされた呈示は無効であり、呈示期間経過後の補充によっても遡及的に有効とはならない。よって、遡及権行使としての手形金請求は認められない。
実務上の射程
手形の厳格な要式性を確認した判例である。白地手形による遡及権保全のための支払呈示においては、呈示期間内に白地部分を補充した上で呈示を行う必要があることを実務上・答案上も銘記すべきである。
事件番号: 昭和43(オ)679 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
白地手形による支払のための呈示は無効であつてその呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものでないことは当裁判所の判例であり(昭三三年三月七日第二小法廷判決、民集一二巻三号五一一頁)、右につき、受取人欄白地の手形を別異に解することはできない。