白地手形による支払のための呈示は無効であつてその呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものでないことは当裁判所の判例であり(昭三三年三月七日第二小法廷判決、民集一二巻三号五一一頁)、右につき、受取人欄白地の手形を別異に解することはできない。
受取人欄白地の手形による支払のための呈示の効力
手形法38条,手形法53条,手形法10条,手形法77条
判旨
白地手形は補充がなされるまでは未完成の手形であり、これによる支払呈示は無効である。受取人欄が白地のままなされた呈示も同様に無効であり、呈示期間経過後の補充によって遡及的に有効となることはない。
問題の所在(論点)
受取人欄が白地の手形による支払呈示の効力、および呈示期間経過後の補充による遡及的有効化の成否。
規範
白地手形は補充がなされるまでは未完成の手形にすぎず、手形上の権利を行使することはできない。したがって、白地手形による支払のための呈示は無効であり、呈示期間経過後に白地部分が補充されたとしても、当該補充により過去の呈示が遡及的に有効となることはない。
重要事実
上告人は、受取人欄が白地である手形(白地手形)を、白地のまま支払のために呈示した。その後、手形の呈示期間が経過してから受取人欄の補充を行ったが、当該期間内の呈示が有効であることを前提に手形上の権利を主張した。これに対し、期間内の呈示が無効であるかどうかが争点となった。
あてはめ
本件における手形は受取人欄が白地であり、補充がなされるまでは未完成の手形であるといえる。未完成の手形による呈示は、手形法上の適法な支払呈示としての効力を有しない。また、呈示期間が経過した後に受取人欄を補充したとしても、一度無効となった呈示行為が遡って有効になる性質のものではないと解される。したがって、適法な期間内に有効な支払呈示があったと認めることはできない。
結論
受取人欄白地の手形による呈示は無効であり、その後の補充によっても遡及的に有効とはならない。上告を棄却する。
実務上の射程
手形法上の権利行使(特に遡及権の保全や遅滞責任の追及)において、支払呈示は「完成した」手形で行う必要があることを明示した射程の広い判例である。実務上、白地手形の所持人は呈示期間内に必ず白地を補充した上で呈示を行うべきであり、答案上も呈示の適法性を論じる際の不可欠な前提知識となる。
事件番号: 昭和41(オ)586 / 裁判年月日: 昭和41年12月1日 / 結論: 棄却
会社の資力を仮装するため単に見せ手形として使用する約束のもとに振出人欄に記名押印し振出日および受取人欄を空欄として交付された約束手形につき、相手方が約旨に反して右空欄を補充した場合であつても、さらに裏書譲渡を受けた所持人が悪意重過失なくして右約束手形を取得したものである以上、振出人は所持人に対して手形金支払義務を負うも…