一、振出日白地の約束手形の所持人が、その満期から三年以内に、振出人に対して、右白地部分を補充しないまま手形金請求の訴を提起し、その後右訴の事実審口頭弁論終結時までに右白地部分を補充したときは、たとえその補充の時が満期から三年を経過したのちであつたとしても、右手形上の権利の時効は、右訴の提起の時に中断されたものと解すべきである。 二、満期が記載されている白地手形の白地補充権は、手形上の権利と別個独立に時効によつて消滅するものではなく、手形上の権利が消滅しないかぎりこれを行使しうるものと解すべきである。
一、振出日白地の手形による訴提起と時効中断 二、満期が記載されている白地手形の白地補充権の消滅時効
手形法10条,手形法70条1項,手形法71条,手形法77条1項,民法149条
判旨
振出日白地の約束手形について、所持人が満期から3年以内に白地を補充せず手形金請求の訴えを提起し、その後補充したときは、補充が時効期間経過後であっても、時効は訴え提起の時に中断される。白地補充権は手形上の権利が消滅しない限り行使可能であり、事実審の口頭弁論終結時までに行使すれば足りる。
問題の所在(論点)
振出日白地の約束手形において、白地を補充しないまま提起された手形金請求の訴えに時効中断の効力(現行法上の更新・完成猶予に相当)が認められるか。また、時効期間経過後に白地補充権を行使することができるか。
規範
1. 白地手形の所持人の振出人に対する権利は、満期から3年の時効にかかるが、未完成の状態であっても時効中断の措置をとることができる。2. 白地補充権は手形上の権利を完成させる手段にすぎず、別個独立に時効消滅するものではない。3. したがって、手形上の権利が存続する限り補充権も行使可能であり、満期から3年以内に訴えを提起した(または時効の援用がない)場合、事実審の口頭弁論終結時までに補充すれば、時効中断の効力は遡及的に認められる。
重要事実
被上告人は、満期が昭和33年5月25日、振出日が白地の約束手形を所持していた。被上告人は、満期から3年以内である昭和36年5月10日に、振出人である上告人らに対し手形金請求の訴えを提起した。その後、第一審の事実審口頭弁論継続中である昭和38年4月18日に振出日を補充したが、この補充の時点は満期から3年を経過した後であった。上告人らは、補充が時効期間経過後であることを理由に、時効中断の効力を争った。
あてはめ
本件手形は振出日が白地であるが、受取人白地の場合と同様、所持人は未完成のまま時効中断の措置を講じうる。被上告人は満期から3年以内に訴えを提起しており、この訴え提起により手形上の権利の消滅時効は中断されたといえる。白地補充権は独立して時効にかかるものではなく、手形上の権利が消滅していない以上、訴訟継続中に補充することは許される。被上告人は事実審の口頭弁論終結前に適法に補充を完了したため、訴え提起時に時効中断の効力が発生したと解するのが相当である。
結論
本件手形金債権の消滅時効は訴え提起の時に中断されており、その後の補充によって手形上の権利が完成した以上、請求は認容されるべきである。
実務上の射程
白地手形による訴え提起が「裁判上の請求」として有効であることを認めた重要判例。答案上は、白地補充権の性質(独立した時効にかからない)と、訴え提起による時効中断の遡及的効力をセットで論じる際に用いる。事実審口頭弁論終結時までに補充すれば救済されるという実務上の指針となっている。
事件番号: 昭和43(オ)679 / 裁判年月日: 昭和43年10月8日 / 結論: 棄却
白地手形による支払のための呈示は無効であつてその呈示期間経過後の補充により右呈示が遡つて有効になるものでないことは当裁判所の判例であり(昭三三年三月七日第二小法廷判決、民集一二巻三号五一一頁)、右につき、受取人欄白地の手形を別異に解することはできない。