白地手形のまま手形金請求の訴を提起した場合でも、右訴提起の時に時効の中断があつたものと解すべきである。
白地手形による訴提起と時効の中断
手形法10条,手形法71条,民法149条
判旨
受取人白地の白地手形の所持人は、白地部分を補充しなくても、裁判上の請求等の措置をとることで手形上の権利の消滅時効を中断できる。その後、時効期間経過後に白地を補充した場合であっても、訴え提起時に時効中断の効力が生じる。
問題の所在(論点)
受取人が白地である未完成の約束手形の所持人が、白地部分を補充しないまま提起した手形金請求訴訟によって、手形上の権利の消滅時効(手形法70条1項、77条1項8号)を中断することができるか。
規範
白地手形は、手形要件を完備しない未完成手形であるが、所持人はいつでも補充して権利を行使できる立場にある。一方で、手形法に基づき未完成の状態でも消滅時効は進行する。したがって、比較均衡の観点および白地手形の経済的機能・流通確保の見地から、所持人は白地を補充することなく、未完成手形のままの状態で時効中断の措置を講じ得ると解すべきである。
重要事実
約束手形の振出人に対し、受取人欄が白地のまま手形を所持していた者が、満期日から3年の時効期間が経過する前に手形金請求訴訟を提起した。所持人は、訴訟提起後、かつ満期日から3年を経過した後に受取人欄を自己の名称で補充して手形を完成させた。
あてはめ
本件手形は受取人が白地であるが、所持人は適法な補充により自ら権利者となり得る地位にある。白地手形のまま時効が進行する以上、時効中断の途を閉ざすべき合理的根拠はない。本件では、時効期間経過前に訴えが提起され、その後に白地が補充されている。たとえ補充自体が時効期間経過後であっても、遡及的に有効な手形となる以上、訴え提起の時に権利行使の意思が客観的に明確になっており、時効中断の効力を認めるのが相当である。
結論
受取人未補充のまま提起された訴訟により時効は中断される。その後になされた白地補充が時効期間後であっても、訴え提起時に時効中断の効果が生じるため、時効は完成しない。
実務上の射程
白地手形に関する基本判例であり、時効中断のために早期の補充を強制しない実務慣行を是認した。答案上は、白地手形の権利の法的性質(一種の期待権的地位)に触れつつ、時効の進行と中断の均衡を論拠として活用する。なお、給付判決を得るためには事実審の口頭弁論終結時までに補充が必要である点に留意する。
事件番号: 昭和28(オ)1191 / 裁判年月日: 昭和31年2月3日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】受取人欄が未記載のまま交付された約束手形であっても、補充権が付与されている限り、白地約束手形として有効である。また、振出人が受取人から手形を回収して返還すべき義務を負わせた事実は、第三者である所持人に対する人的抗弁にすぎず、特段の事情がない限り支払を拒めない。 第1 事案の概要:上告人は、受取人欄…