事実上の夫婦間の婚姻予約不履行を理由とする慰籍料請求事件および右夫婦の一方の親権に服する子が他方を傷害したことを理由とする損害賠償請求事件は、家事審判法第一七条にいう家庭に関する事件に当る。
家事審判法第一七条にいう家庭に関する事件と認められた事例
家事審判法17条
判旨
事実上の夫婦関係にある者等の「親族に準ずる者」の間に生じた紛争は、家事審判法(現行の家事事件手続法)にいう「家庭に関する事件」に該当し、家庭裁判所が調停を行う権限を有する。
問題の所在(論点)
事実上の夫婦関係にある者の間で生じた、婚姻予約不履行による慰謝料請求や、相手方の子による不法行為を理由とする損害賠償請求が、家事審判法(現・家事事件手続法)上の「家庭に関する事件」として家庭裁判所の調停権限に属するか。
規範
家庭裁判所の調停権限が及ぶ「家庭に関する事件」とは、親族間に準ずる者の間に生じた紛争の解決を内容とするものを含む。具体的には、法律上の親族関係がなくとも、事実上の夫婦関係(内縁関係)などの実質的な家庭生活の事態から生じた紛争であれば、家庭に関する事件として家庭裁判所の管轄に属する。
重要事実
上告人と被上告人は事実上の夫婦関係(内縁関係)にあった。被上告人には、唯一の親権者である子Dがいた。佐賀家庭裁判所において、上告人と被上告人との間で、①婚姻予約不履行を理由とする慰謝料請求、および②Dによる上告人への傷害を理由とする被上告人に対する損害賠償請求の2件について調停(本件調停)が成立した。これに対し、上告人が家庭裁判所の権限逸脱等を理由にその効力を争った。
あてはめ
本件の両事件(慰謝料請求および損害賠償請求)は、事実上の夫婦関係にある者という「親族に準ずる者」の間で発生した紛争である。これらは実質的に家庭生活に関連して生じた紛争の解決を目的とするものであるから、裁判所法31条の3に基づき、家庭裁判所が調停を行う権限を有する「家庭に関する事件」に該当すると評価される。また、本件調停によって権利義務を定められたのは当事者である上告人と被上告人のみであり、子Dに直接義務を課すものではないため、手続上の違法も認められない。
結論
本件調停は家庭裁判所の権限に属する有効なものであり、適法である。
実務上の射程
家事調停の対象となる「家庭に関する事件」の範囲を、法律上の親族関係に限定せず、内縁関係等の「親族に準ずる者」の間の紛争にも広げた射程を有する。答案上では、内縁解消に伴う慰謝料や財産分与的な損害賠償、さらにはその連れ子に関連する紛争についても、家庭裁判所の専属的な管轄または調整機能が及ぶことを基礎付ける論拠として活用できる。
事件番号: 昭和48(行ツ)4 / 裁判年月日: 昭和50年6月27日 / 結論: 棄却
訴訟事件について和解の権限を有する訴訟代理人は、右事件が調停に付された場合、当該調停についても当然に代理権を有する。