昭和二〇年政令第七八号(ドイツ財産移動の制限に関する)に違反し、主務大臣の許可なくドイツ財産の所有権の変動を定めた調停も、平和条約後右財産に対する凍結解除の指令があつたときは有効となる。
昭和二〇年大蔵省令第七八号(ドイツ財産移動の制限に関する)に違反する調停の平和条約後の効力
昭和20年大蔵省令78条,日本国との平和条約20条
判旨
戦後、特定国財産の移転を制限した省令の目的は賠償請求権の保全にあるため、当該財産が凍結解除された場合には、制限期間中になされた遺産分割調停による所有権移転の効果を否定すべき理由はない。
問題の所在(論点)
移転制限法令(昭和20年大蔵省令第78号等)により権利移転が禁止されていた期間中に成立した遺産分割調停の効力は、その後の凍結解除によって有効となるか。
規範
財産権の移転を制限する法令の効力は、その制定目的(特定の賠償請求権の保全等)に照らして合理的に解釈されるべきである。制限の目的が将来の賠償請求権を保全するための現状凍結にある場合、当該財産が賠償に充てられることなく凍結解除され、当初の目的が消滅したときは、制限下で行われた権利変動の効果を否定する合理的理由はなくなる。
重要事実
昭和21年、亡Dの遺産について遺産分割調停が成立し、被上告人Bが不動産を単独取得する内容で合意した。しかし当時、ドイツ等の特定国財産の移転を原則禁止する大蔵省令が施行されており、大蔵大臣の許可が得られなかったため直ちに所有権移転の効力が生じなかった。その後、日本国との平和条約発効に伴い、管理主体である三国委員会が当該不動産の凍結解除を通知し、日本政府も相続人らへ遺産受領を促した。これを受け、調停による所有権移転の効果が認められるかが争われた。
あてはめ
本件省令による特定国財産の移動制限は、連合国のドイツ等に対する賠償請求権を保全するため、財産を現状凍結する点にあった。本件不動産は、結局賠償に充てられることなく三国委員会により凍結解除され、日本政府からも受領通知がなされている。制限の趣旨であった賠償請求権の保全という目的が失われた以上、もはや本件調停による不動産所有権移転の効果を否定する実質的な理由は存在しないと解される。
結論
本件不動産の凍結が解除された以上、移転制限を理由に調停の効力を否定することはできず、調停に基づく所有権移転の効果が認められる。
実務上の射程
行政上の強行法規(移転制限)に違反する合意の私法上の効力が問題となる場面で、当該法規の趣旨(目的)が事後的に消滅した場合に、遡及的または停止条件的に効力を認める際のロジックとして活用できる。
事件番号: 昭和42(オ)748 / 裁判年月日: 昭和42年11月17日 / 結論: 棄却
建物所有のための土地の賃貸借の期間を五年と定めることが法律上有効であると思つて、建物収去土地明渡の和解をしても、右は要素の錯誤にあたらない。
事件番号: 昭和34(オ)1109 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 棄却
一 不動産売買がなされた後、同一当事者間で民事調停において同一不動産につき代金を増額したほか原判示のような約定であらためてなされた売買(原判決理由参照)は、前の売買契約を確認し、その約定を附加訂正したものと解するのが相当である。 二 不動産売買契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の本登記は、その後調停で同一不動産に…