一 不動産売買がなされた後、同一当事者間で民事調停において同一不動産につき代金を増額したほか原判示のような約定であらためてなされた売買(原判決理由参照)は、前の売買契約を確認し、その約定を附加訂正したものと解するのが相当である。 二 不動産売買契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の本登記は、その後調停で同一不動産について約定を附加訂正してなされた売買に基づく所有権移転登記として有効である。
一 同一不動産について再度なされた売買契約の解釈に関する事例 二 実体的権利関係に符合する所有権移転登記の効力
民法91条,民法555条,民法177条
判旨
実体的な権利関係に合致する本登記であれば、登記申請の過程に手続上の誤りがあったとしても、不動産登記としての対抗力を有する。
問題の所在(論点)
登記申請の手続に瑕疵がある場合や、当初の仮登記の流用が疑われる場合であっても、その結果なされた本登記が実体的な権利関係に符合していれば、対抗力のある有効な登記といえるか。
規範
登記は、不動産に関する物権の変動を公示して第三者に対する対抗力を与えるものであるから、たとえその登記手続において何らかの不備や誤謬があったとしても、当該登記が現在の実体的な権利関係と合致している限り、その登記は有効なものとして対抗力を有する。
重要事実
被上告人と上告人Aとの間で本件不動産の売買契約が締結され、これに基づき仮登記がなされた。その後、調停によって当該売買が確認され、一部の約定が付加訂正された。この仮登記に基づいて本登記がなされたが、上告人側は、本登記申請の過程において手続上の誤りがあり、また仮登記の流用にあたる等として、その登記の効力を争った。
事件番号: 昭和34(オ)70 / 裁判年月日: 昭和35年4月21日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】登記申請手続に瑕疵がある登記であっても、それが現在の実体的な権利関係に合致するものである限り、当該登記は有効であり、登記義務者はその抹消を請求することができない。 第1 事案の概要:本件において、上告人と被上告人の間で売買が行われ、それに基づき所有権移転登記がなされた。上告人は、当該登記の申請手続…
あてはめ
本件不動産の売買は調停においても確認されており、被上告人が実体法上の所有権を有している事実に疑いはない。仮に本登記の申請手続において「手続上の誤謬」があったとしても、また、仮登記から本登記に至る過程に議論の余地(仮登記の流用等)があったとしても、最終的な本登記の内容は「本件の実体的権利関係に符合するもの」と認められる。したがって、登記の公示機能を損なうものではなく、有効な登記として維持されるべきである。
結論
本登記は有効であり、不動産登記としての対抗力を有する。
実務上の射程
実体関係符合の原則を認めた基本判例の一つ。手続的な瑕疵がある登記であっても、現在の権利状態と一致しているならば有効であるという法理を示す際に引用する。中間省略登記や無効登記の流用といった論点における基礎的な判断枠組みとして活用できる。
事件番号: 昭和39(オ)1107 / 裁判年月日: 昭和42年2月23日 / 結論: 棄却
昭和三九年(オ)第七七号同四一年一一月一八日第二小法廷判決(民集二〇巻九号一八二七頁掲載)と同旨。
事件番号: 昭和39(オ)444 / 裁判年月日: 昭和42年1月26日 / 結論: 棄却
農地に関する紛争が宅地建物調停事件として処理された場合でも、そのことから直ちに、成立した調停をもつて当然無効のものということはできない。
事件番号: 昭和32(オ)1020 / 裁判年月日: 昭和36年12月12日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】代位権限を欠く者によって行われた不動産登記であっても、その登記が登記義務者の真実の意思に合致するものである場合には、当該登記の抹消を求めることはできない。 第1 事案の概要:上告人と第一審被告a町との間で、本件山林の表示欄の段別(地積)を減少させる旨を含む調停(調停条項1項、2項)が成立した。一方…
事件番号: 昭和44(オ)1009 / 裁判年月日: 昭和45年6月2日 / 結論: その他
甲が、融資を受けるため、乙と通謀して、甲所有の不動産について売買がされていないのにかかわらず、売買を仮装して甲から乙に所有権移転登記手続をした場合において、乙がさらに丙に対し右融資のあつせん方を依頼して右不動産の登記手続に必要な登記済証、委任状、印鑑証明書等を預け、丙がこれらの書類により乙から丙への所有権移転登記を経由…