判旨
代位権限を欠く者によって行われた不動産登記であっても、その登記が登記義務者の真実の意思に合致するものである場合には、当該登記の抹消を求めることはできない。
問題の所在(論点)
不動産登記法上の代位権限を欠く者によってなされた登記について、その登記が登記義務者の意思(実体的な合意内容)に合致する場合、当該登記の抹消を請求できるか。また、数個の合意を含む調停の一部が無効である場合、当然に他の条項も無効となるか。
規範
不動産登記の抹消請求が認められるためには、当該登記が実体法上の権利関係に合致しないものであることを要する。たとえ登記申請手続において代位権限の欠如等の瑕疵があったとしても、その登記の内容が登記義務者の真実の意思、および合致すべき実体関係(調停条項等による義務)に適合するものである限り、実体関係に合致する有効な登記として、その抹消を求めることはできない。
重要事実
上告人と第一審被告a町との間で、本件山林の表示欄の段別(地積)を減少させる旨を含む調停(調停条項1項、2項)が成立した。一方、上告人と他の被告(D、E)間の調停条項(3項)は無効とされた。被上告人は、上告人を代位して右段別減少の変更登記手続を行ったが、これには正当な代位権限がなかった。上告人は、一部の調停条項が無効であることを理由に全体が無効であると主張し、かつ無権限者による登記であるとして抹消を請求した。
あてはめ
本件調停条項1・2項は上告人とa町との間で成立したものであり、無効とされた3項とは当事者を異にする。1・2項の効力が3項の有効を前提とする特段の事情がない限り、1・2項は独立して有効である。この有効な調停条項に基づき、上告人には段別減少登記を行う義務がある。被上告人が代位権限なく行った登記は、上告人が負うべき義務の内容と一致し、上告人の意思に合致するものであると推認される。したがって、実体関係に合致する登記としての効力を有し、抹消義務は認められない。
結論
被上告人による登記手続は上告人の意思に合致しており、実体関係に適合するため、上告人はその抹消を請求できない。また、一部の調停条項が無効であっても、直ちに他の有効な条項に基づく登記の効力が否定されるものではない。
事件番号: 昭和34(オ)1280 / 裁判年月日: 昭和36年10月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】不動産の二重譲渡において、第一の譲受人は、自らが未だ所有権移転登記を備えていない以上、第二の譲受人に対して所有権の取得を対抗することができない。これは、第二の譲受人の有する登記が有効であるか否かを問わない。 第1 事案の概要:上告人は、本件不動産を譲り受けたと主張しているが、未だその所有権取得の登…
実務上の射程
登記の有効性は、手続の適法性(申請権限の有無)のみならず、最終的に実体関係(物権変動や登記義務の存否)に合致するかによって判断される。実務上、無権限代理人や代位権限のない者による登記であっても、その内容が正しい実体関係を反映していれば「実体関係に合致する登記」として保護される法理の確認として機能する。
事件番号: 昭和33(オ)720 / 裁判年月日: 昭和35年11月15日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】相続による不動産の取得も、対抗問題(民法177条)となり得るが、相手方がその権利取得の事実を争わない場合には、登記の欠缺を理由に権利取得を否定することはできない。 第1 事案の概要:被上告人らは、共同相続を原因として本件山林の共有権を取得した。これに対し上告人は、被上告人らが共有権を取得した事実自…
事件番号: 昭和34(オ)1109 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 棄却
一 不動産売買がなされた後、同一当事者間で民事調停において同一不動産につき代金を増額したほか原判示のような約定であらためてなされた売買(原判決理由参照)は、前の売買契約を確認し、その約定を附加訂正したものと解するのが相当である。 二 不動産売買契約に基づく所有権移転請求権保全の仮登記の本登記は、その後調停で同一不動産に…
事件番号: 昭和31(オ)956 / 裁判年月日: 昭和35年3月24日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】特定の立木を代物弁済として提供する代理権や登記費用の負担特約を締結する権限があるからといって、当然にその土地自体の所有権を移転させる代理権まで認められるものではない。 第1 事案の概要:上告人らは、被上告人の代理人Dとの間で、本件山林の立木を債務の代物弁済として供する旨の合意をし、立木の所有権保存…
事件番号: 昭和33(オ)602 / 裁判年月日: 昭和36年6月6日 / 結論: 棄却
順次なされた所有権移転登記の中間取得者のみを被告とし、当該被告よりさらに移転登記を受けた者を共同被告としない抹消登記手続請求も許される。