判旨
特定の立木を代物弁済として提供する代理権や登記費用の負担特約を締結する権限があるからといって、当然にその土地自体の所有権を移転させる代理権まで認められるものではない。
問題の所在(論点)
立木の代物弁済や登記費用負担の特約を結ぶ権限を有する代理人が、その目的物に関連する不動産(山林)自体の所有権を移転させる代理権を有すると認められるか。また、かかる周辺的な権限の存在を基礎に表見代理が成立するか。
規範
代理権の範囲は、授与された権限の性質や目的に照らして個別具体的に決定される。ある特定の目的(立木の代物弁済等)のために与えられた限定的な代理権から、当然にそれを超える処分行為(不動産自体の所有権移転等)に関する代理権を推認することはできない。
重要事実
上告人らは、被上告人の代理人Dとの間で、本件山林の立木を債務の代物弁済として供する旨の合意をし、立木の所有権保存登記費用の負担特約も結んだ。上告人らは、Dには本件山林自体の所有権を移転させる代理権もあったと主張し、山林の所有権移転登記の有効性を争った。また、強制競売費用の支払担保として移転登記がなされた旨の主張や、表見代理の成立も主張した。
あてはめ
Dに立木の代物弁済権限や立木登記費用の負担特約を結ぶ権限があったとしても、それは立木という特定の動産的財産に関する処分等に限定されたものである。山林という不動産自体の所有権移転は、立木の処分とは質的に異なる重大な処分行為であり、前者の権限から後者の権限を当然に導き出すことはできない。また、強制競売費用に関する支払担保の合意についても、事実関係に照らし、山林の移転登記を正当化するに足りる代理権の存在や正当な理由を認めることはできない。
結論
Dには山林自体の所有権を移転させる代理権は認められず、所有権移転登記を有効とする上告人の主張は認められない。
事件番号: 昭和33(オ)251 / 裁判年月日: 昭和36年1月17日 / 結論: 棄却
病身の夫が家族との不和と療養の関係からさして遠方でない土地に別居中、妻が無断で夫の印章を偽造し、夫の代理名義で夫所有の土地家屋を代金三一〇万円で売却した場合、交渉の行われた場所が当該の家屋であり、家族の収入は妻名義でなす貸間収入で賄われており、成人した子供達が交渉の際同席する等、一応妻に代理権があると信じさせるような事…
実務上の射程
代理権の範囲を画定する際、関連する一部の処分権限から他の重要な処分権限を安易に拡張推認してはならないことを示している。答案上は、権限外の行為(民法110条)の検討において、「基本代理権」の有無や範囲を厳格に認定する際の論拠として活用できる。
事件番号: 昭和28(オ)1115 / 裁判年月日: 昭和30年3月31日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】法定代理人である後見人から不動産の処分につき代理権を授与された復代理人が、その後代理人として売買契約を締結した場合、その売買の効果は本人に帰属する。 第1 事案の概要:上告人の法定代理人である後見人Eは、訴外Dに対し、本件不動産の処分に関する代理権を授与した。Dは、昭和23年2月20日、後代理人と…
事件番号: 昭和36(オ)65 / 裁判年月日: 昭和36年11月30日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】行政処分の先行段階である買収計画に対する異議申立の却下決定通知が不適法であっても、その後の買収処分が当然無効になるわけではなく、取消原因にとどまる。また、受領拒絶は令書の交付ができない場合に該当し、公告をもって代えることができる。 第1 事案の概要:上告人は、未墾地買収計画に対する異議申立の却下決…
事件番号: 昭和29(オ)976 / 裁判年月日: 昭和31年6月1日 / 結論: 棄却
本人の死亡を代理権消滅の原因とする民法第一一一条第一項第一号の規定は、これと異なる合意の効力を否定する趣旨ではない。
事件番号: 昭和37(オ)396 / 裁判年月日: 昭和40年10月12日 / 結論: 棄却
第一審判決主文に民訴法第一九四条にいう明白な誤謬がある場合、控訴裁判所が控訴棄却の判決をするにあたり判決の理由中に理由を示し主文において右誤謬を更正しても違法ではない。