昭和三九年(オ)第七七号同四一年一一月一八日第二小法廷判決(民集二〇巻九号一八二七頁掲載)と同旨。
一 登記申請行為と表見代理 二 偽造文書による登記の効力
不動産登記法25条,不動産登記法26条,不動産登記法35条,民法110条
判旨
偽造書類による登記申請は公法上の行為として表見代理規定が直接適用されないが、実体的権利関係との合致、登記義務者による拒否不可の特段の事情、および登記権利者の善意無過失という要件を満たす場合には、登記の無効を主張できない。
問題の所在(論点)
偽造書類による登記申請がなされた場合において、表見代理の法理を類推し、登記の無効主張を封じることができるか。特に、公法上の行為である登記申請における表見代理規定適用の可否が問題となる。
規範
登記申請行為は公法上の行為であるから、民法の表見代理規定の直接適用はない。しかし、①登記の記載が実体的法律関係に符合し、かつ、②登記義務者においてその登記を拒みうる特段の事情がなく、③登記権利者において当該登記申請が適法であると信ずるにつき正当の事由(善意無過失)があるときは、登記義務者は信義則上、当該登記の無効を主張することができない。
重要事実
上告人(本人)の代理人であると称したDが、被上告人との間で根抵当権設定契約、代物弁済予約、連帯保証契約を締結した。Dは上告人の意思に基づかず委任状を偽造して登記申請を行い、登記が完了した。実体法上の契約関係については民法112条および110条により上告人に効果が帰属し、有効に成立していると判断された。一方、登記申請自体は偽造書類に基づくなされたものであった。
事件番号: 昭和39(オ)77 / 裁判年月日: 昭和41年11月18日 / 結論: 棄却
一 登記申請行為自体には、表見代理に関する民法の規定の適用はない。 二 偽造文書によつて登記がされた場合でも、その登記の記載が実体的法律関係に符合し、かつ、登記義務者において登記申請を拒むことができる特段の事情がなく、登記権利者において当該登記申請が適法であると信ずるにつき正当の事由があるときは、登記義務者は右登記の無…
あてはめ
本件では、Dが上告人の代理人として行った契約は表見代理(112条、110条)により有効とされており、登記の記載はこれに整合するため①実体的法律関係に符合する。また、実体的な契約責任を負う上告人には②登記を拒絶すべき正当な理由は認められず、相手方である被上告人はDに権限があると信じるにつき③正当の事由(善意無過失)がある。したがって、登記申請が偽造書類によるものであっても、その無効を主張して抹消を請求することは許されない。
結論
上告人は、本件各登記の無効を主張してその抹消を請求することはできない。
実務上の射程
登記申請という公法上の行為には表見代理が直接適用されないことを明示した上で、実体的権利関係との合致を前提とした信義則的な無効主張制限の枠組みを示す。実体法上の契約が表見代理で有効になる場合に、付随する登記申請行為の瑕疵を治癒させる文脈で使用する。
事件番号: 昭和40(オ)583 / 裁判年月日: 昭和42年10月27日 / 結論: 棄却
無権代理人の偽造文書による申請に基づいて登記がされた場合においても、本人が右登記の原因たる法律行為を追認したことによりその登記の記載が実体的法律関係に符合するにいたつたときには、本人は、右登記の無効を主張してその抹消登記手続を請求することはできない。
事件番号: 昭和46(オ)803 / 裁判年月日: 昭和47年11月28日 / 結論: 破棄差戻
甲が、乙と相通じ、仮装の所有権移転請求権保全の仮登記手続をする意思で、乙の提示した所有権移転登記手続に必要な書類に、これを仮登記手続に必要な書類と誤解して署名押印したところ、乙がほしいままに右書類を用いて所有権移転登記手続をしたときは、甲は、乙の所有権取得の無効をもつて善意・無過失の第三者に対抗することができない。
事件番号: 昭和35(オ)469 / 裁判年月日: 昭和37年2月16日 / 結論: 棄却
仮登記後本登記をするまでの間に、仮登記義務者により本登記の目的たる権利と相容れない処分が行われ、これに基づく第三者の権利取得の登記がなされたとしても、右本登記が為された以上、右第三者の権利取得は否認され、その登記の抹消を求めることができる。(同旨、昭和三二年六月七日第二小法廷判決、民集一一巻九三六頁、昭和三二年六月一八…
事件番号: 昭和37(オ)1421 / 裁判年月日: 昭和38年9月19日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約における代金が時価に比して著しく低廉であっても、契約締結当時の諸事情や弁論の全趣旨を総合的に考慮した結果、直ちに当該契約を虚偽表示(通謀虚偽表示)として無効と断定することはできない。 第1 事案の概要:土地所有者Dの父Eが、Dの代理人と称して本件土地を上告人に売却したが、後にDと被上告人と…