将来四二〇月にわたる期間に得べき全利得を損害賠償として一時に支払を受ける場合に、一月ごとにホフマン式計算法を適用して算出した金額を合算する方法によることができる。
将来において得べき全利得を損害賠償として一時に支払を受ける場合とホフマン式計算法
民法709条
判旨
不法行為により即死した被害者であっても、死亡と同時に慰謝料請求権を取得し、それが相続人に相続される。また、将来の逸失利益を一時金で請求する場合、ホフマン式計算法を用いて中間利息を控除することは適法である。
問題の所在(論点)
1. 被害者が即死した場合、精神的苦痛を感じる時間的余地がないとして慰謝料請求権は否定されるべきか(即死者の慰謝料請求権の成否と相続性)。 2. 将来の逸失利益を一時金で支払う際の中間利息控除の方法として、ホフマン式計算法を採用することの是非。
規範
不法行為により被害者が即死した場合であっても、生命侵害による精神的苦痛を原因とする慰謝料請求権は、死亡と同時に被害者に発生し、相続人がこれを承継取得する。また、将来得られたはずの利益(逸失利益)を算定するにあたり、中間利息を控除する方法としてホフマン式計算法を用いることは合理的であり、許容される。
重要事実
被害者Eは、加害者(上告人の被用者D)の事業執行中の過失による交通事故により即死した。被害者Eの相続人である被上告人は、Eが有していた精神的苦痛に対する慰謝料(30万円)および将来の逸失利益について、損害賠償請求権を相続したとして、使用者である上告人に対し損害賠償を求めて提訴した。
あてはめ
1. 慰謝料について:判決は、即死であっても死亡と同時に慰謝料請求権が発生することを前提とする。反対意見は「死亡そのものを原因とする慰謝料請求権は認められない」とするが、多数意見は従前の判例を踏襲し、相続による承継を認めた。 2. 逸失利益について:将来の利得を一時に受領する場合、ホフマン式計算法を用いて計算することは、これまでの判例(昭和34年判決等)の趣旨に照らして正当である。原審が争いがない事実に基づき算定した過程に違法はない。
結論
被害者が即死した場合でも慰謝料請求権は発生し、相続の対象となる。また、ホフマン式計算法による損害額算定は適法である。したがって、上告を棄却する。
実務上の射程
被害者が即死した場合の慰謝料請求権の発生および相続性を認めた確立した判例である。答案上では、被害者本人の慰謝料を肯定する際の根拠として「死亡と同時に請求権が発生する」旨を簡潔に記す。また、中間利息控除については現在はライプニッツ式が一般的だが、ホフマン式も算定手法の一つとして司法上の裁量の範囲内であることを示す際に参照される。
事件番号: 昭和44(オ)479 / 裁判年月日: 昭和45年4月21日 / 結論: 棄却
一、被用者の不法行為に基づく責任と民法七一五条に基づく使用者の責任とは、いわゆる不真正連帯債務の関係にあり、その一方の債務について和解等がされても、現実の弁済がされないかぎり、他方の債務については影響がないと解するのが相当である。 二、不法行為による慰籍料請求権は、被害者の死亡によつて当然に発生し、これを放棄、免除する…