省略 (反対意見がある。)
不法行為による慰藉料請求権の相続性
民法710条,民法711条
判旨
不法行為に基づく損害賠償請求権のうち、慰謝料請求権についても、被害者が生前に請求の意思を表明するなどの特段の事情がない場合であっても、当然に相続の対象となる。
問題の所在(論点)
不法行為に基づく慰謝料請求権が、被害者の生前の意思表示等を要することなく、当然に相続の対象となるか。民法710条および896条の解釈が問題となる。
規範
不法行為により発生した慰謝料請求権は、被害者が死亡した当時、すでに具体的な金銭債権と同視しうる状態に転化していたか否かを問わず、当然に相続により承継される。被害者は損害の発生と同時に損害賠償請求権を取得し、その権利は一身専属的な性質を有しないため、相続の開始によって当然に相続人に帰属する。
重要事実
被害者Dは、上告人の過失による事故により損害を被り、治療費、逸失利益、および慰謝料合計約166万円の損害賠償請求権を有していた。Dは本件訴訟の第二審係属中に死亡したため、被上告人(相続人)らがその権利を法定相続分に応じて承継したと主張し、請求を維持した。上告人側は、慰謝料請求権は一身専属的なものであり、具体的な金銭債権に転化していない限り相続されないと争った。
あてはめ
最高裁は、原審が認めた慰謝料額100万円を含む損害賠償請求権の相続を肯定した原判決を正当とした。反対意見では、慰謝料は主観的色彩が強く、具体的な金銭債権に転化しない限り相続性を有しないとされるが、法廷意見(多数意見)は、慰謝料請求権も他の財産上の損害賠償請求権と同様に、被害者の死亡によって当然に相続人に承継されるべきものと判断した。これにより、Dが受領済みの保険金を控除した残額の請求権が被上告人らに帰属することが認められた。
結論
被害者が死亡した場合、その慰謝料請求権は生前の意思表示の有無を問わず当然に相続される。したがって、被上告人らの相続による請求は認められる。
実務上の射程
被害者が即死した場合であっても、理論上は損害発生と死亡の間に観念的な時間的差を認めることで、慰謝料請求権の相続が認められる。答案上では、被害者が死亡した際の損害賠償請求において、逸失利益(709条)と同様に、慰謝料(710条)についても特段の手続きなく相続の対象として立論する際の根拠となる。
事件番号: 昭和44(オ)479 / 裁判年月日: 昭和45年4月21日 / 結論: 棄却
一、被用者の不法行為に基づく責任と民法七一五条に基づく使用者の責任とは、いわゆる不真正連帯債務の関係にあり、その一方の債務について和解等がされても、現実の弁済がされないかぎり、他方の債務については影響がないと解するのが相当である。 二、不法行為による慰籍料請求権は、被害者の死亡によつて当然に発生し、これを放棄、免除する…