主債務の消滅時効完成後に、主債務者が当該債務を承認し、保証人が、主債務者の債務承認を知つて保証債務を承認した場合には、保証人がその後主債務の消滅時効を援用することは許されない(昭和三七年(オ)第一三一六号同四一年四月二〇日大法廷判決、民集二〇巻四号七〇二頁参照)。
保証人が主債務の消滅時効を援用することが許されないとされた事例
民法146条,民法448条
判旨
主債務の消滅時効完成後に、主債務者が債務を承認し、保証人がその事実を知って保証債務を承認した場合には、保証人が主債務の消滅時効を援用することは、信義則上許されない。
問題の所在(論点)
主債務の消滅時効が完成した後に、保証人が主債務者の債務承認の事実を知りながら保証債務を自ら承認した場合、保証人は民法457条2項(現行法457条3項)に基づき主債務の消滅時効を援用することができるか。
規範
消滅時効完成後の「承認」は、時効の利益を放棄したのと同様の効果を生じさせる信義則上の根拠となる。したがって、①主債務の消滅時効が完成した後に、②主債務者が債務を承認し、かつ、③保証人が主債務者の承認の事実を知った上で保証債務を承認した場合には、保証人による主債務の時効援用は信義則に照らし許されない(民法1条2項)。
重要事実
上告人は、主債務者である会社の代表取締役兼連帯保証人であった。本件貸金債務は昭和31年4月28日の経過により消滅時効が完成していたが、上告人は昭和34年9月、被上告人に対し、主債務者の代表者として債務の存在を認め、かつ、連帯保証人として元金50万円の限度で支払う意思があることを明示した。その後、上告人は主債務の消滅時効を援用して支払いを拒んだ。
あてはめ
本件において、時効完成後の昭和34年9月に、主債務者たる会社は債務の承認を行っている。上告人はその代表者としてこの承認に関与しており、主債務者の承認の事実を当然に認識していた。その上で、上告人は自らも連帯保証人として元金50万円の支払意思を明示して保証債務を承認している。このように、時効完成と主債務者の承認を知りながら自ら債務を承認した以上、相手方に時効を援用しないとの信頼を生じさせており、後に主債務の時効を援用することは矛盾挙動として信義則(民法1条2項)に反する。
結論
上告人(保証人)による主債務の消滅時効の援用は認められず、元金50万円およびこれに対する遅延損害金の支払義務を負う。
実務上の射程
時効完成後の承認に関する最大判昭41・4・20の理屈を保証債務に拡張した判例である。答案では、保証人の時効援用権の有無が問われた際、457条3項の原則を指摘しつつ、本判例の要件(保証人が主債務者の承認を知っていること)を充足すれば、信義則を根拠として例外的に援用権が制限されると論じる。
事件番号: 昭和44(オ)1131 / 裁判年月日: 昭和45年5月21日 / 結論: その他
債務者が、消滅時効の完成後に、債権者に対し当該債務を承認した場合においても、以後ふたたび時効は進行し、債務者は、再度完成した消滅時効を援用することができる。