手形金債務の消滅時効が承認により中断せられるためには、該手形の呈示を伴う手形金の請求がなければならないものではない。
手形金債務の承認による消滅時効の中断。
手形法38条,民法147条3号
判旨
手形金債務の消滅時効を中断させる事由としての「承認」が成立するためには、必ずしも債権者からの手形の呈示を伴う請求が行われていることを要しない。
問題の所在(論点)
手形金債務の消滅時効中断事由としての「承認」が成立するために、債権者による手形の呈示を伴う請求が必要か。
規範
消滅時効の中断事由である債務の承認(民法147条3号、現行法152条1項)は、債務者が債権者に対して債務の存在を認める観念の通知をすれば足りる。手形債務の承認についても、債務者が権利者に対し、その手形上の義務の存在を認める表示をしたと解される限り、手形の呈示を伴う請求が先行していることは要件とならない。
重要事実
上告人は手形金債務の負担者であったが、時効完成前に債務を認める言動(判決文からは詳細不明だが、原審が「承認」と認定した事実)を行った。上告人は、手形法上の呈示を伴う適法な手形金請求がなされていない以上、時効中断事由としての承認は成立しないと主張して上告した。
あてはめ
手形債務における「承認」は、債権者が手形を呈示して権利を行使したことに対する応答である必要はない。債務者が自ら債務の存在を認める行為をすれば、それは時効を中断させるに足りる承認となる。本件において上告人が行った判示の所為(具体的な事実は不明だが、原審において適法に認定された事実)は、手形の呈示がなかったとしても、手形金債務の存在を認める意思を表したものと評価できるため、時効中断の効力を生じさせる承認に該当すると解される。
結論
手形金債務の承認には手形の呈示を伴う請求があることを要しない。したがって、上告人の行為によって消滅時効は中断されている。
実務上の射程
手形債務の時効中断(承認)に関するリーディングケース。手形は提示証券・受戻証券であるが、承認による中断については民法の一般原則が妥当し、手形の占有・提示という手形特有の属性に縛られないことを明確にしている。答案上は、時効中断の抗弁において「提示の有無」が争点となった際の根拠として活用できる。
事件番号: 昭和34(オ)471 / 裁判年月日: 昭和36年7月20日 / 結論: 棄却
手形の呈示を伴わない催告には、手形債権の時効を中断する効力がない。