手形の呈示を伴わない催告には、手形債権の時効を中断する効力がない。
手形の呈示を伴わない催告による時効中断の効力の有無。
民法147条1号,民法153条,手形法38条1項,手形法39条1項
判旨
手形債権の消滅時効を中断させるための催告(旧民法153条)においては、手形が有価証券であり、権利の行使に占有を要すること、および支払時に受取証書との引換え請求が可能であることに鑑み、手形の呈示を必要とする。
問題の所在(論点)
手形債権の消滅時効中断のための催告(旧民法153条)において、有効な権利行使の意思表示として手形の呈示が必要か。
規範
手形債権につき時効中断の効力を生じさせるための催告をなす場合には、手形の呈示を必要とする。
重要事実
上告人は、被上告人に対し、本件手形債権の消滅時効を中断させる目的で、民法153条(当時)に基づく催告を行った。しかし、当該催告に際して手形の現物を呈示していなかったため、その催告が有効な時効中断の事由となるかが争点となった。原審は手形の呈示がないことを理由に時効中断を認めなかったため、上告人がこれを不服として上告した。
あてはめ
手形は有価証券であり、その権利行使には手形の占有を伴うことが不可欠である。また、手形債務者が権利者の催告に応じて支払をする際は、手形に受取を証する記載をなしてこれの交付を請求し得る権利(引換証券性)を有する。これらの手形の性質を考慮すると、裁判外の請求である催告においても、客観的に権利行使の準備が整っていることを示すため、手形の呈示を伴うべきであると解される。したがって、本件において手形の呈示なくなされた催告は、時効中断の効力を生じない。
結論
手形の呈示を欠く催告は、手形債権の時効中断事由(催告)として認められない。上告棄却。
実務上の射程
手形債権の消滅時効の管理において極めて重要な判例である。裁判外で内容証明郵便のみを送付しても、手形の呈示がなければ時効は中断しないため、答案上は手形の「呈示」という手続的要件の欠如を指摘する際に用いる。また、民法上の一般原則(催告に厳格な形式を求めない)に対する有価証券特有の修正事例として位置づけられる。
事件番号: 昭和37(オ)683 / 裁判年月日: 昭和39年8月24日 / 結論: 棄却
手形金債務の消滅時効が承認により中断せられるためには、該手形の呈示を伴う手形金の請求がなければならないものではない。