債務者がその占有使用する家屋所有権の譲渡をもつて代物弁済をしたときには、特段の事情のない限り、同人は右代物弁済契約の履行として右家屋を明け渡す義務があると解するのが相当である。
家屋所有権を代物弁済の目的とした場合と債務者の家屋明渡義務
民法482条
判旨
債務者が占有使用する家屋の所有権を代物弁済として譲渡した場合、特段の事情がない限り、代物弁済契約の履行として当該家屋の明渡義務を負う。
問題の所在(論点)
家屋の所有権を代物弁済の目的として譲渡した場合、明示的な明渡しの約定がなくても、債務者は当然に当該家屋の明渡義務を負うか。
規範
債務者がその占有使用する家屋の所有権を代物弁済により譲渡した場合、当該債務者に家屋の占有使用を許すなどの特段の約定がない限り、代物弁済契約の履行として当該家屋を明け渡すべき義務がある。
重要事実
債務者である上告人は、自身が占有使用していた家屋の所有権を、債務の代物弁済として被上告人に譲渡した。その後、被上告人が上告人に対し、代物弁済による所有権譲渡契約に基づき家屋の明渡しを請求したところ、上告人が明渡義務の有無を争った。
あてはめ
事件番号: 昭和42(オ)1423 / 裁判年月日: 昭和43年12月24日 / 結論: 破棄差戻
貸金債務を負担するに際し、抵当権を設定するとともに、またはこれに付加して代物弁済に関する契約を締結した場合において、右貸金債務について利息の約定のほかに、右利息の不支払を条件として期限の利益を失い、爾後約定利率に従つた遅延損害金を支払う旨の約定が存在するときは、右代物弁済に関する合意は停止条件付代物弁済契約ではなく、債…
本件において、上告人は家屋の所有権を代物弁済として譲渡している。譲渡後も上告人に引き続き占有使用を許すといった「特段の約定」があることは記録上認められない。したがって、代物弁済契約の本旨に従った履行として、目的物である家屋の占有を移転すべき義務(明渡義務)が肯定される。
結論
特段の約定がない限り、代物弁済契約の履行として家屋の明渡義務を負う。したがって、被上告人の明渡請求は認容される。
実務上の射程
代物弁済による所有権移転の効力に伴い、当然に占有移転義務(明渡義務)が生じることを示した判例である。答案上は、明渡しの合意の有無が争点となった際に、所有権移転の合意があれば特段の事情がない限り明渡義務も包含される旨を論証する際に活用できる。
事件番号: 昭和43(オ)689 / 裁判年月日: 昭和46年12月7日 / 結論: 棄却
(省略)