貸金債務を負担するに際し、抵当権を設定するとともに、またはこれに付加して代物弁済に関する契約を締結した場合において、右貸金債務について利息の約定のほかに、右利息の不支払を条件として期限の利益を失い、爾後約定利率に従つた遅延損害金を支払う旨の約定が存在するときは、右代物弁済に関する合意は停止条件付代物弁済契約ではなく、債権者において期限の到来後予約完結権の行使を必要とする代物弁済の予約と解するのが相当である。
代物弁済に関する合意が停止条件付代物弁済契約でなく代物弁済の予約と解された事例
民法482条,民法369条,民法420条
判旨
貸金債務の担保として抵当権を設定する際、またはこれに付随して代物弁済の合意がなされた場合、特段の事情がない限り、それは停止条件付代物弁済契約ではなく、代物弁済の予約と解するのが相当である。
問題の所在(論点)
抵当権設定と共になされた代物弁済の合意が、弁済期の経過によって当然に所有権が移転する「停止条件付代物弁済契約」か、それとも債権者の意思表示を要する「代物弁済の予約」かの解釈が問題となる。
規範
金銭消費貸借に際し、抵当権の設定と同時またはこれに付随して代物弁済に関する契約が締結された場合、特段の事情のない限り、それは債権者の予約完結権の行使を必要とする「代物弁済の予約」であると解すべきである。不履行により当然に所有権が移転する「停止条件付代物弁済契約」と解するためには、そのように解すべき特段の事情の主張・立証を要する。
重要事実
上告人(債務者)は被上告人(債権者)から170万円を借り入れる際、本件家屋に抵当権を設定し、あわせて弁済期に履行がないときは本件家屋の所有権を移転する旨の合意をした。本件契約には、利息の支払を怠ったときは期限の利益を喪失し、以降は遅延損害金を支払う旨の特約も付されていた。被上告人は、弁済期の経過により所有権が当然に自己に移転したと主張して明渡し等を求めた。
あてはめ
本件では抵当権設定に付随して代物弁済の合意がなされており、原則として代物弁済の予約と推定される。加えて、本件契約には期限の利益喪失後の遅延損害金支払特約が存在しており、これは不履行後も債務関係が存続し得ることを前提とするものである。したがって、不履行により直ちに所有権が移転する停止条件付契約とは解し難く、むしろ予約完結権の行使を必要とする代物弁済の予約と解すべき事情があるといえる。原審が特段の事情を明らかにせず停止条件付契約と断じたのは解釈を誤ったものである。
結論
本件代物弁済の合意は、特段の事情がない限り代物弁済の予約と解される。したがって、単に弁済期が経過した事実のみをもって所有権が移転したと判断することはできず、予約完結権の行使の有無等を審理させるため、原判決を破棄し差し戻す。
実務上の射程
担保目的でなされる代物弁済予約等の弱者保護(暴利行為防止)の文脈で、契約の性質決定に関する基本ルールとして機能する。答案上は、物権変動の時期や債権的請求権の成否を論ずる際、契約解釈の指針として本規範を明示すべきである。
事件番号: 昭和32(オ)1216 / 裁判年月日: 昭和36年3月3日 / 結論: 棄却
抵当権設定契約とともに停止条件付代物弁済の本契約をすることも許される。
事件番号: 昭和43(オ)362 / 裁判年月日: 昭和43年9月12日 / 結論: 棄却
賃貸借が裁判所の調停によつて成立し、その調停条項中には無断転貸禁止の条項があつたばかりでなく、賃借人に中間利得があり、賃貸人が本件解除前あらかじめ転借人に無断転借は承認できない旨を告知している等原審認定の諸事実(原判決理由参照)があれば、賃借人の義務違反の程度は強く、本件家屋の一部転貸が背信行為に当らないとはいえない。