一、土地の売買契約が仮換地につきその一部分を特定してなされたものであるときは、売主の買主に対する売買契約上の登記を移転すべき義務の履行の方法としては、売主は、買主に対し、仮換地全体に対する売買契約の目的とされた土地の地積に応じ、従前地について持分権の移転登記手続をなす義務を負い、買主が売主に対し仮換地指定変更申請に協力しないからといつて右義務の履行を拒むことができるものではない。 二、民法の定める売主の担保責任は強行規定と解すべきではなく、右担保責任を加重する特約は有効である。
一、仮換地につき買受部分を特定してなされた売買契約と売主としての登記を移転すべき義務 二、売主の担保責任を加重する特約の効力
土地区画整理法99条,民法249条,民法555条,民法3編2章3節2款
判旨
仮換地の一部を特定した売買契約は、特段の事情がない限り従前地の共有持分の売買と解され、売主は持分移転登記により債務を履行できる。また、売主の担保責任は任意規定であり、信義則に反しない限り、特約によって損害賠償額の予定等の加重をすることも有効である。
問題の所在(論点)
1. 仮換地の一部売買における売主の債務履行の方法および履行不能の有無。2. 民法上の担保責任の規定を特約で加重することの可否(任意規定性)。
規範
1. 仮換地の一部を特定して売買契約が締結された場合、特段の事情がない限り、仮換地全体の地積に対する当該特定部分の地積の比率に応じた従前の土地の共有持分の売買と解される。2. 売主の担保責任に関する規定は強行規定ではなく、信義則に反しない限り、特約によって加重(損害賠償額の予定等)することができる。
重要事実
上告人(売主)と被上告人(買主)は、土地区画整理事業施行中の仮換地の一部を特定して売買契約を締結した。その後、買主が仮換地指定変更願書への押印を拒絶したため、売主は債務を履行できないと主張した。これに対し、買主は売主の債務不履行を理由に契約を解除し、契約上の損害賠償額の予定(違約金)に基づき請求を行った。売主側は、担保責任の規定や信義則・権利濫用を理由にその有効性を争った。
あてはめ
1. 本件売買は仮換地の一部特定によるものであるから、売主は仮換地全体に対する当該部分の比率に応じた従前地の持分移転登記をすれば債務を履行できたといえる。したがって、買主の押印拒絶が履行不能の事由になることはなく、売主には債務不履行が認められる。2. 買主による契約解除および違約金請求は、売主が登記移転義務を怠ったことに基づくものであり、信義則違反や権利濫用には当たらない。3. 担保責任の規定は任意規定であるため、当事者間で損害賠償額の予定を合意することは有効であり、売主は合意された違約金を支払う義務を負う。
結論
仮換地の一部売買において売主は持分移転登記義務を負い、これを怠れば債務不履行となる。また、担保責任を特約で加重する損害賠償額の予定の合意は有効であり、売主は違約金支払義務を免れない。
実務上の射程
仮換地の売買における目的物の特定と公示方法(持分登記)を整理する際の指針となる。また、民法560条以下の担保責任規定が任意規定であることを明示しており、実務上、契約書における違約金条項や損害賠償の特約が原則として有効であることを裏付ける判例として活用できる。
事件番号: 昭和51(オ)982 / 裁判年月日: 昭和51年12月20日 / 結論: 棄却
農地の買主が農地法五条の許可申請手続に協力しない場合でも、売買代金が完済されているときは、特段の事情のない限り、売主は買主が右協力をしないことを理由に売買契約を解除することはできない。
事件番号: 昭和23(オ)118 / 裁判年月日: 昭和24年10月1日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】履行遅滞による解除権の発生には、相当期間を定めた催告が必要であり、当事者の合意によって定められた当初の確定履行期を徒過したとしても、直ちに解除権が発生するわけではない。また、無催告解除の特約が認められない限り、債務者の履行遅滞のみをもって直ちに契約を解除することはできない。 第1 事案の概要:売主…
事件番号: 昭和51(オ)291 / 裁判年月日: 昭和51年12月2日 / 結論: 棄却
双務契約の当事者の一方が、相手方の債務と同時履行の関係にある自らの反対給付の提供をすることなしに、相手方の履行遅滞を理由としてした契約解除は、相手方の履行遅滞があれば催告を要することなく契約を解除しうる旨の特約がある場合においても、効力を生じない。
事件番号: 昭和25(オ)69 / 裁判年月日: 昭和27年8月23日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】民法557条1項にいう「履行に着手」とは、債務の履行そのもの、または履行の一部をなすのに欠くことのできない前提行為を行うことを指し、山林の売買において目的物の実地引渡しがなされた場合はこれに該当する。 第1 事案の概要:上告人(買主)と被上告人(売主)との間で山林の売買契約が締結された。売買に際し…