一 売買の目的物である立木を売主が買主以外の者に売却して伐採搬出されたときは、そのときに買主に対する債務不履行が成立する。 二 売主が債務不履行のときは内入金の倍額を買主に支払い、買主の債務不履行のときは内入金を放棄するとの約定は、債務不履行の場合に当事者間の契約関係を清算しようとするための損害賠償を予定したものと解することができる。 三 右のような場合に、売主が買主の債務不履行を理由として損害賠償を請求するためには、契約を解除する必要はない。
一 立木の二重売買と債務不履行の成立時期 二 売主の債務不履行のときは内入金の倍額を買主に支払い、買主の債務不履行のときは内入金を放棄するとの約定と賠償額の予定 三 予定賠償額の請求と契約解除の要否
民法415条,民法557条,民法420条,民法541条
判旨
売買契約において債務不履行を理由とする賠償額の予定がある場合、債権者は契約を解除することなく直ちに予定された賠償額を請求できる。また、目的物を第三者に売却して搬出させた場合は履行不能となり、債務不履行が成立する。
問題の所在(論点)
1. 賠償額の予定がある場合、その請求に先立って契約の解除を要するか。 2. 目的物を第三者に売却・搬出させたことは履行不能にあたるか。 3. 相手方の提供を受領しなかった売主が、相手方の供託がないことを理由に自身の債務不履行を免れることができるか。
規範
債務不履行の場合の賠償額の予定(民法420条1項)が、契約関係を清算するためのものであると解される場合、債権者は契約の解除を待たず、債務不履行の事実のみに基づいて直ちに予定の賠償額を請求することができる。また、売買契約の目的物を第三者に売却し、伐採・搬出させた事実は、特段の事情がない限り引渡債務の履行不能に当たる。
重要事実
売主(上告人)と買主(被上告人)の間で立木の売買契約が締結され、債務不履行時の違約金(賠償額の予定)が約定されていた。買主は代金の提供を行ったが、売主はこれを受領せず、当該立木を第三者に売却して伐採・搬出させた。買主は、売主の引渡債務が履行不能になったとして、契約解除の手続きを経ることなく違約金の支払いを求めた。
あてはめ
1. 本件の違約金約定は債務不履行時の契約清算を目的とする賠償額の予定であり、解除は請求の要件ではない。 2. 売主が立木を他者に売却し搬出させた以上、買主への引渡債務は物理的・社会通念上履行不能といえる。 3. 買主は適法に代金提供を行っており、売主がこれを受領せず他へ転売した以上、買主に供託の義務はなく、売主の履行不能責任は免れない。
結論
買主は契約を解除することなく、直ちに予定された賠償額(違約金)を請求できる。売主の引渡債務は履行不能であり、債務不履行に基づく責任を免れない。
実務上の射程
契約解除と損害賠償請求の関係、および履行不能の判断基準を示す。特に「賠償額の予定」がある事案では、解除を待たずに請求可能とする実務上の簡便な構成として活用できる。
事件番号: 昭和58(オ)548 / 裁判年月日: 昭和63年11月25日 / 結論: その他
売主の責に帰すべき履行不能により不動産売買契約が解除された場合の損害賠償額の予定に関する約定は、それが履行不能による賠償額算定の争いを避けるためにされたものであり、解除の有無によつて買主の請求しうる額に差異がない等判示の事情のもとにおいては、買主が契約を解除することなく本来の給付に代わる填補賠償を請求する場合にも適用さ…
事件番号: 昭和27(オ)105 / 裁判年月日: 昭和29年5月28日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】売買契約が解除された場合における債務不履行を理由とする損害賠償額は、目的物の引渡しがなされていれば買主が享受できたはずの解除当時の時価と代金との差額を含む。 第1 事案の概要:被上告人(買主)は、上告人(売主)から製麺機械を買い受ける契約を締結したが、上告人の債務不履行により当該契約を解除した。本…