労働基準法第一一四条に基づき使用者の支払うべき付加金の支払義務は、裁判所がその支払を命ずることによつて初めて発生し、これに対する遅延損害金の起算日は該判決確定の日の翌日と解すべきである。
労働基準法第一一四条に基づき使用者の支払うべき付加金に対する遅延損害金の起算日
労働基準法114条
判旨
労働基準法上の付加金支払義務は、裁判所がその支払を命ずることによって初めて発生する。したがって、付加金に対する遅延損害金は、判決確定の日の翌日から発生すると解するのが相当である。
問題の所在(論点)
労働基準法114条に基づく付加金支払義務の発生時期はいつか。また、付加金に対する遅延損害金の起算日はいつか。
規範
労働基準法114条に基づく付加金の支払義務は、公法上の義務に類する性質を有し、労働者の請求に基づき裁判所が裁量によってその支払を命ずることにより、初めて具体的に発生する形成的なものと解される。したがって、付加金債務は判決確定によって成立するため、その履行遅滞による遅延損害金は、判決確定日の翌日から発生する。
重要事実
付帯上告人(労働者)が上告人(使用者)に対し、未払賃金等とともに労働基準法114条所定の付加金の支払を求めた事案である。原審は、付加金の支払を命じるとともに、当該付加金に対する遅延損害金の起算日を「判決確定の日の翌日」と判断した。これに対し付帯上告人は、遅延損害金の発生時期をより早期に認めるべきであるとして上告した。
あてはめ
付加金支払義務は、私法上の債務不履行に基づく損害賠償義務とは異なり、裁判所が命ずることによって初めて発生する特殊な法的性質を有する。本件においても、付加金債務が具体化するのは裁判所の判決によるものであり、判決が確定するまでは債務そのものが法的に成立していない。そのため、判決確定前には履行遅滞の問題は生じ得ず、判決が確定し、支払義務が具体的に確定した日の翌日から遅延損害金が発生すると判断される。
結論
付加金に対する遅延損害金の起算日を判決確定の日の翌日とした原審の判断は相当であり、付帯上告を棄却する。
実務上の射程
労働事件における付加金請求の起案において、遅延損害金の起算点を「訴状送達の翌日」等と誤認しないために必須の判例である。また、付加金が「裁判所の命令によって初めて発生する(形成判決的な性質)」という点は、除斥期間や消滅時効、また判決確定前の支払による付加金支払義務の消滅といった周辺論点の基礎となる考え方である。
事件番号: 昭和30(オ)93 / 裁判年月日: 昭和35年3月11日 / 結論: 棄却
一 使用者が労働基準法第二〇条所定の予告期間をおかず、また予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でないかぎり、通知後同条所定の三〇日の期間を経過するか、または予告手当の支払をしたときに解雇の効力を生ずるものと解すべきである。 二…
事件番号: 平成13(受)1709 / 裁判年月日: 平成15年10月10日 / 結論: 破棄差戻
1 使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。 2 就業規則が法的規範として拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する。
事件番号: 平成28(受)2099 / 裁判年月日: 平成30年6月1日 / 結論: その他
1 有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件の相違が労働契約法20条に違反する場合であっても,同条の効力により当該有期契約労働者の労働条件が比較の対象である無期契約労働者の労働条件と同一のものとなるものではない。 2 労働契約法20条にいう「期間の定めがあることにより」とは,有期契約労働者と無期契約労働者との労働条件…