1 使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。 2 就業規則が法的規範として拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する。
1 使用者による労働者の懲戒と就業規則の懲戒に関する定めの要否 2 就業規則に拘束力を生ずるための要件
労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの)89条,労働基準法(平成10年法律第112号による改正前のもの)106条,労働基準法93条
判旨
就業規則が法的規範として労働者を拘束するためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する。使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則に懲戒の種別及び事由を定めておく必要があり、周知されていない規則に基づく懲戒解雇は無効である。
問題の所在(論点)
就業規則が法的規範として労働者を拘束するための要件、及び周知手続を欠く就業規則に基づき懲戒解雇を行うことの可否。
規範
1. 使用者が労働者を懲戒するには、あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。 2. 就業規則が法的規範としての性質を有し、拘束力を生ずるためには、その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する。
重要事実
株式会社D興産の従業員であった上告人は、上司への暴言等を理由に新就業規則に基づき懲戒解雇された。D興産には旧就業規則が存在し、労基署への届出もなされていたが、上告人が勤務していた「センター」には備え付けられておらず、上告人の質問に対しても開示されていなかった。原審は、届出手続がなされている以上、周知手続が未了であっても旧就業規則は有効であり、これに照らして懲戒解雇は有効であると判断した。
あてはめ
本件において、D興産は労働者代表の同意を得て旧就業規則を制定し、労基署長に届け出ていた事実は認められる。しかし、法的規範としての拘束力が生じるためには、実質的に労働者がその内容を知り得る状態に置く「周知」が必要である。上告人が勤務していたセンターに規則が備え付けられていなかったという事実は、周知手続が採られていなかったことを示唆する。原審は、周知手続の有無を十分に認定しないまま、届出の事実のみをもって規則の効力を肯定し懲戒解雇を有効としたが、これは審理不尽であり法令の適用を誤ったものである。
結論
就業規則の拘束力発生には周知手続が不可欠であり、周知されていない就業規則に基づき懲戒解雇を有効とした原判決は破棄を免れない。本件を原審に差し戻す。
実務上の射程
懲戒の有効要件として、実体的な理由(労働契約法15条等)以前に、手続的要件として「就業規則の周知」が必要であることを明示した重要判例である。答案上では、懲戒解雇の有効性を検討する際の「あらかじめ就業規則に定めがあること」の小前提として、周知の有無を論じる際に活用する。単なる作成・届出では足りない点に注意が必要である。
事件番号: 昭和49(オ)832 / 裁判年月日: 昭和50年7月17日 / 結論: その他
一、労働基準法一一四条の附加金の支払いを判決の確定後において、使用者が右附加金の支払いをしないときは、使用者は、履行遅滞の責を免れない。 二、労働基準法一一四条の附加金に対する遅延損害金の起算日は、右附加金の支払いを命じた判決確定の日の翌日である。
事件番号: 昭和43(オ)1060 / 裁判年月日: 昭和43年12月19日 / 結論: 棄却
労働基準法第一一四条に基づき使用者の支払うべき付加金の支払義務は、裁判所がその支払を命ずることによつて初めて発生し、これに対する遅延損害金の起算日は該判決確定の日の翌日と解すべきである。
事件番号: 平成15(受)1099 / 裁判年月日: 平成18年3月28日 / 結論: 破棄自判
使用者の責めに帰すべき事由による解雇の期間中の賃金につき使用者が支払義務を負う金額を算定する場合において,労働者が同期間中に他の職に就いて得た利益の額が当該利益を得た期間における平均賃金合計額の4割を超え,かつ,使用者が労働者に対し労働基準法12条4項所定の賃金に当たる期末手当及び勤勉手当を支払うこととされているという…