一 使用者が労働基準法第二〇条所定の予告期間をおかず、また予告手当の支払をしないで労働者に解雇の通知をした場合、その通知は、即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でないかぎり、通知後同条所定の三〇日の期間を経過するか、または予告手当の支払をしたときに解雇の効力を生ずるものと解すべきである。 二 労働基準法第一一四条の附加金支払義務は、使用者が予告手当等を支払わない場合に当然に発生するものではなく、労働者の請求により裁判所がその支払を命ずることによつて、初めて発生するものであるから、使用者に労働基準法第二〇条の違反があつても、すでに予告手当に相当する金額の支払を完了し、使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、労働者は、附加金請求の申立をすることができないものと解すべきである。
一 労働基準法第二〇条に違反してなされた解雇の効力 二 労働基準法第一一四条の附加金支払義務の性質
労働基準法20条,労働基準法114条
判旨
労働基準法20条所定の手続を欠く解雇通知は、即時解雇を固執する趣旨でない限り、30日の経過等により有効となる。また、同法114条の付加金支払義務は裁判所の命令により発生するため、支払完了後は請求できない。
問題の所在(論点)
1.労働基準法20条の予告手続を欠く解雇通知の効力(即時解雇としては無効な通知が、後に有効な解雇となり得るか)。2.同法114条に基づく付加金請求について、事実審の口頭弁論終結時までに義務違反の状態が消滅(支払完了)している場合の請求の可否。
規範
1.労基法20条の予告期間または予告手当を欠く解雇通知は、原則として即時解雇の効果を生じないが、使用者が即時解雇を固執する趣旨でない限り、通知後30日の期間が経過するか、または通知後に所定の予告手当の支払をしたときは、そのいずれかの時点から解雇の効力を生ずる。2.同法114条の付加金支払義務は、裁判所が支払を命ずることによって初めて発生する形成的なものである。したがって、使用者の義務違反の状況が消滅した後においては、付加金を請求することはできない。
事件番号: 昭和32(オ)972 / 裁判年月日: 昭和36年2月9日 / 結論: 棄却
一 二四時間以上の予告期間の記載を欠く書面による船員雇入契約の解除申入は、右書面交付の時から二四時間を経過した時に解除の効力を生ずるものと解すべきである。 二 雇止手当または送還手当の支払は、船員雇入契約解除の効力発生要件ではない。
重要事実
使用者は、労働者に対し、労働基準法20条に定められた30日前の解雇予告を行わず、かつ解雇予告手当の支払も行わないまま、即時解雇の通知を行った。労働者は、当該解雇が無効であると主張するとともに、同法114条に基づく付加金の支払を求めて提訴した。なお、訴訟の過程で、解雇通知から30日が経過し、また予告手当に相当する金額の支払も完了していた。
あてはめ
1.本件解雇通知は即時解雇としては効力を生じないが、使用者が即時解雇を固執していたとは認められないため、通知から30日の期間が経過した時点で解雇の効力が発生したものと評価される。2.付加金は義務違反を制裁する目的の金銭であり、裁判所の命令により発生するものである。本件では、既に予告手当相当額の支払が完了し、義務違反の状況が消滅しているため、裁判所が新たに支払を命じる余地はないといえる。
結論
1.解雇は通知から30日の期間経過により有効となる。2.既に予告手当相当額の支払が完了している場合、付加金請求は認められない。
実務上の射程
手続不備のある解雇を「有効な予備的申出」として救済する枠組みとして重要。付加金については、判決確定時ではなく「事実審の口頭弁論終結時」までに支払えば支払義務を免れるという実務上の指針となっている(最判昭35.3.11参照)。
事件番号: 昭和32(オ)1013 / 裁判年月日: 昭和35年5月26日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】公務員の俸給請求権の放棄について、懲戒免職処分の取消しと依願免職処分への変更を停止条件とする合意がなされた場合、その放棄は有効である。 第1 事案の概要:公務員である上告人が懲戒免職処分を受けた際、当該処分を将来的に取り消し、遡って昭和28年4月8日付で依願免職(自己都合退職)とする処分を行うこと…
事件番号: 昭和43(オ)1060 / 裁判年月日: 昭和43年12月19日 / 結論: 棄却
労働基準法第一一四条に基づき使用者の支払うべき付加金の支払義務は、裁判所がその支払を命ずることによつて初めて発生し、これに対する遅延損害金の起算日は該判決確定の日の翌日と解すべきである。
事件番号: 平成13(受)1709 / 裁判年月日: 平成15年10月10日 / 結論: 破棄差戻
1 使用者が労働者を懲戒するには,あらかじめ就業規則において懲戒の種別及び事由を定めておくことを要する。 2 就業規則が法的規範として拘束力を生ずるためには,その内容を適用を受ける事業場の労働者に周知させる手続が採られていることを要する。