判旨
公務員の俸給請求権の放棄について、懲戒免職処分の取消しと依願免職処分への変更を停止条件とする合意がなされた場合、その放棄は有効である。
問題の所在(論点)
公務員が、自身の懲戒免職処分の取消し等を停止条件として、過去の期間に係る俸給請求権を放棄することの可否。また、かかる放棄の意思表示の有効性。
規範
公務員による俸給請求権の放棄は、その意思表示が自由な意思に基づくものであり、かつ、公務員としての身分上の不利益を回避するための調整手段として合理的である場合には、私法上の合意と同様に有効と解される。
重要事実
公務員である上告人が懲戒免職処分を受けた際、当該処分を将来的に取り消し、遡って昭和28年4月8日付で依願免職(自己都合退職)とする処分を行うことを条件として、昭和27年3月9日から同28年4月8日までの期間に係る俸給請求権を放棄する旨の合意がなされた。その後、上告人は放棄したはずの俸給の支払いを求めて提訴した。
あてはめ
本件における俸給請求権の放棄は、上告人に対する「懲戒免職処分の取消し」および「依願免職への変更」という、上告人の身分上の重大な不利益を解消する措置と引き換えに行われたものである。このような停止条件付の放棄は、当事者間の合意に基づき適法に成立しており、事実認定に照らしても有効であると判断される。したがって、放棄の意思表示を否定すべき法令違反や違憲の事由は認められない。
結論
本件俸給請求権の放棄は有効であり、上告人の請求は認められない。上告棄却。
実務上の射程
労働基準法上の賃金全額払の原則の公務員への適用可能性(国公法・地公法の優先)が前提となるが、本判決は私法上の放棄と同様の論理で公務員の給与請求権放棄を認めている。現代の司法試験においては、シンガー・ソーイング・メシーン事件(最判昭48.1.19)等が示す「自由な意思に基づくことが客観的に信頼するに足りる合理的な理由」があるかという視点から補強して論じるのが実務的である。
事件番号: 昭和33(オ)670 / 裁判年月日: 昭和35年7月26日 / 結論: 棄却
地方公務員の依願休職処分は無効ではない。
事件番号: 昭和25(オ)7 / 裁判年月日: 昭和27年2月22日 / 結論: 棄却
憲法で保障されたいわゆる基本的人権も絶対のものではなく、自己の自由意思に基く特別な公法関係または私法関係上の義務によつて制限を受けるものであつて、自己の自由意思により、校内において政治活動をしないことを条件として教員として学校に雇われた場合には、その契約は無効ではない。
事件番号: 昭和34(オ)396 / 裁判年月日: 昭和35年7月21日 / 結論: 棄却
一 町村合併による新町の発足により旧町村の正式職員であつた者が新たに新町の職員として任命されたような場合には、条件附任用に関する地方公務員法第二二条の適用はない。 二 地方公務員法第二八条第一項第一号、第三号に該当するかどうかの判断は、任命権者の純然たる自由裁量に任された事項ではなく、同条の趣旨にそう一定の客観的標準に…