憲法で保障されたいわゆる基本的人権も絶対のものではなく、自己の自由意思に基く特別な公法関係または私法関係上の義務によつて制限を受けるものであつて、自己の自由意思により、校内において政治活動をしないことを条件として教員として学校に雇われた場合には、その契約は無効ではない。
政治活動をしないことを条件とする雇傭契約と基本的人権の制限
憲法19条,憲法20条,憲法21条,民法623条
判旨
自己の自由な意思に基づき、一定の範囲で政治活動をしないことを条件として雇用契約を締結した場合には、特約による基本的人権の制限は有効である。そのため、学校内での政治活動を禁止する特約に違反した教師の行為を理由とする不利益処分は、憲法および公序良俗に反しない。
問題の所在(論点)
私法上の雇用契約において、校内での政治活動を禁止する特約を設けることが、憲法が保障する基本的人権(思想・良心の自由、表現の自由等)や民法90条の公序良俗に反し無効とならないか。
規範
憲法により保障される基本的人権も絶対無制限なものではなく、自己の自由意思に基づく特別な公法上または私法上の義務によって制限を受ける。一定の範囲において政治活動をしないことを条件として雇用された場合、その特約は本人の自由意思に基づく限り、憲法または民法上の公序良俗に違反せず有効である。
重要事実
共産党員である上告人は、私立学校(被上告人校)との間で、裁縫教師として雇い入れられる際に「校内においては政治活動をしないこと」を雇用契約の条件とした。しかし、雇用後に校内で女生徒に対し、共産党の宣伝を含む共産主義者の著書「愛情の問題」の購入を勧め、実際に販売した。これが契約上の禁止事項に該当するとして問題となった。
事件番号: 昭和27(オ)772 / 裁判年月日: 昭和29年3月25日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】学校内でのビラ配布行為が学校事務の運営および児童の教育に重大な支障を来す場合には、憲法が保障する自由の行使であっても解職事由となり得る。 第1 事案の概要:上告人は学校の傭人(職員)であったが、学校内においてビラを配布し、かつ特定の意図をもって欠勤した。原審は、ビラの内容や配布方法、校長の監督権限…
あてはめ
上告人は、校内での政治活動を行わないという条件を自己の自由意思により承諾して雇用されている。当該特約は、勤務場所という限定的な範囲での活動を制限するものであり、私的自治の範囲内といえる。上告人が女生徒に対し、共産党の宣伝を含む書籍を勧誘・販売した行為は、単なる文化的活動に留まらず、明確に「校内における政治活動」に該当する。したがって、特約違反の事実は認められ、特約自体の有効性も否定されない。
結論
校内での政治活動を禁止する特約は有効であり、これに違反した上告人の行為を理由とする判断は正当である。上告棄却。
実務上の射程
私企業や私立学校における労働契約上の政治活動制限について、本人の同意(自由意思)がある限り、憲法・公序良俗違反にならないとする判断枠組みを示した。部分社会の法理や私人間効力の文脈で、権利の自己拘束的側面を肯定する際の有力な根拠となる。
事件番号: 昭和35(オ)624 / 裁判年月日: 昭和37年5月18日 / 結論: 棄却
会社において塗料製法の指導、研究に従事することを職務内容とするいわゆる嘱託であつて、直接上司の指揮命令に服することなく、また遅刻、早退等によつて資金が減額されることはない等一般従業員と異なる待遇を受けているいわゆる嘱託であつても、毎日ほぼ一定の時間会社に勤務し、これに対し所定の賃金が支払われている場合には、労働法の適用…
事件番号: 昭和42(オ)1005 / 裁判年月日: 昭和43年4月9日 / 結論: 棄却
不当労働行為にあたる解雇は無効である。