第三者異議の訴の係属中に強制執行が終了したときは、右訴はその利益を失う。
第三者異議の訴と訴の利益
民訴法545条1項
判旨
第三者異議の訴えの係属中に強制執行が終了した場合には、当該訴えはその利益を失い、不適法となる。執行後の権利救済のためには、損害賠償請求等への訴えの変更が必要である。
問題の所在(論点)
強制執行の終了が、係属中の第三者異議の訴え(民事執行法38条)の訴えの利益に及ぼす影響、および執行終了後の適切な救済手段が問題となる。
規範
第三者異議の訴えは、特定の執行目的物に対する強制執行の排除を目的とする形成の訴えである。したがって、当該強制執行が終了し、目的とする執行手続がもはや存在しなくなった場合には、訴えの利益が消滅し、当該訴えは不適法となる。この場合、執行によって生じた損害の回復を求めるためには、不法行為に基づく損害賠償請求等へ訴えを切り替える(民事訴訟法143条)必要がある。
重要事実
上告人は、第三者異議の訴えを提起して係属中であったが、その間に目的物に対する強制執行が終了した。原審は、強制執行の終了によって本件訴えの利益が失われたと判断し、損害賠償を請求するためには訴えの変更を要すると判示した。これに対し上告人は、憲法違反や法令違反を理由として上告した。
あてはめ
第三者異議の訴えの本質は、特定の強制執行の不許を求める点にある。本件では、訴訟継続中に強制執行が全て終了しており、排除すべき執行手続が既に完了している。このような状況下では、執行の不許を求める形成判決を得る必要性も実益も失われているといえる。したがって、訴えの利益の消滅を認めた原審の判断は正当である。なお、執行が不法行為を構成する場合、その終了後において損害賠償を請求することは可能であるが、それは第三者異議の訴えそのものの枠組みではなく、訴えの変更等の手続を経るべき事由である。
結論
強制執行が終了した以上、第三者異議の訴えは訴えの利益を失い不適法となる。損害賠償を求める場合は訴えの変更を要する。
実務上の射程
実務上、第三者異議の訴えを提起する際は、あわせて執行停止の裁判(民事執行法39条等)を得るなどして執行の終了を防ぐことが肝要である。万が一執行が終了した場合は、速やかに損害賠償請求や不当利得返還請求へと訴えを変更する(交換的変更)実務上の指針となる判例である。
事件番号: 昭和32(オ)613 / 裁判年月日: 昭和32年12月5日 / 結論: 棄却
【結論(判旨の要点)】第三者異議の訴えは、強制執行が終了した後は許容されない。既に執行が完了している場合には、執行を阻止する目的を達することができないため、訴えの利益が認められない。 第1 事案の概要:上告人Aが賃借している家屋に対し、訴外Dに対する債務名義に基づいて強制執行がなされた。Aは、当該強制執行が違法であると…
事件番号: 昭和38(オ)298 / 裁判年月日: 昭和39年5月7日 / 結論: 棄却
第三者異議の訴の係属中に、執行債権者において当該差押物件が執行債務者の責任財産に属しないことを承認して強制執行の取消を求め、差押が解除された場合には、特別の事情のないかぎり、右訴の利益は失われる。