第三者異議の訴の係属中に、執行債権者において当該差押物件が執行債務者の責任財産に属しないことを承認して強制執行の取消を求め、差押が解除された場合には、特別の事情のないかぎり、右訴の利益は失われる。
第三者異議の訴の係属中に差押の解除がなされた場合と訴の利益。
民訴法549条
判旨
第三者異議の訴えの係属中に、執行債権者が目的物の所有権が第三者に属することを認めて差押えを取り下げ、執行処分が取り消された場合には、特段の事情がない限り訴えの利益は消滅する。
問題の所在(論点)
第三者異議の訴えの係属中に執行債権者が申立てを取り下げ、執行処分が取り消された場合において、なお当該債務名義による強制執行の不許を宣言することを求める訴えの利益が認められるか。
規範
第三者異議の訴え(民事執行法38条)の目的は、特定の執行目的物に対する執行の排除にある。したがって、訴訟係属中に執行債権者が目的物が債務者の責任財産に属しないことを承認して執行申立てを取り下げ、これによって執行処分が取り消された場合には、目的物に対する執行の危険が解消されたものとして、特段の事情のない限り、訴えの利益は失われる。
重要事実
1. 執行債権者(被上告人)が債務者に対する債務名義に基づき、目的物件に対して強制執行(差押え)を行った。 2. 第三者(上告人)が目的物件の所有権を主張して、第三者異議の訴えを提起した。 3. 第一審の係属中、執行債権者が調査した結果、物件が第三者の所有であることを認め、差押えを取り下げた。 4. これにより差押えが解除されたため、執行債権者は訴えの利益の消滅を主張した。 5. 第三者側は、再度の執行申立ての可能性がある限り、訴えの利益は存続すると主張して争った。
あてはめ
本件では、被上告人が調査の結果、本件差押物件が第三者である上告人の所有であることを認め、自ら差押えを取り下げている。これは、債権者が自ら「物件が債務者の責任財産に属しないこと」を承認して執行を放棄したものといえる。このような場合、現存する執行の危険は消滅しており、将来的に再度の差押えがなされる蓋然性があるなどの「特別の事情」が認められない限り、もはや本訴を維持して執行不許の宣言を求める必要性はない。したがって、上告人の訴えは利益を欠くものと解される。
結論
第三者異議の訴えは、執行の取り下げと取消しにより訴えの利益を失うため、請求は棄却(実務上は却下となるが、本判決の結論に従う)される。
実務上の射程
執行排除の対象が「特定の執行処分」である場合に、その処分が消滅すれば訴えの利益がなくなるという原則を示したもの。答案上は、執行終了や取下げによる訴えの利益の有無を論じる際の基礎となる。なお、判旨は「特別の事情」の留保を置いており、将来の執行の蓋然性が極めて高い場合には結論が異なる可能性を示唆している点に注意を要する。
事件番号: 昭和35(オ)640 / 裁判年月日: 昭和37年1月19日 / 結論: 棄却
第三者異議の訴は、所有権に基づき当該強制執行の排除を求めているのであるから、右所有権の不存在が認められる以上、執行完結の有無にかかわらず、原告は敗訴となる。