仮差押の債務者が後に破産宣告を受けたときは、仮差押の執行は破産財団に対しては効力を失い、仮差押執行の排除を求める第三者異議の訴はその利益を有しない。
仮差押の債務者が破産宣告を受けたときと第三者異議の訴の利益の有無
民訴法549条,破産法70条
判旨
債務者に対する仮差押執行後に債務者が破産宣告を受けた場合、当該仮差押は破産財団に対して効力を失うため、第三者が当該物件の所有権を主張して提起する第三者異議の訴えは訴えの利益を欠き不適法となる。
問題の所在(論点)
債務者の破産宣告前に開始された仮差押執行に対し、破産宣告後において、第三者が所有権に基づき執行の排除を求める第三者異議の訴え(民事執行法38条参照)を提起することに訴えの利益があるか。
規範
強制執行停止・失効の原則に基づき、破産手続開始前に破産財団に属する財産に対してなされた強制執行、仮差押え等は、破産手続の関係においてはその効力を失う。したがって、執行の排除を目的とする第三者異議の訴えは、執行の効力が既に失われた後においては、その目的を達し得ないため訴えの利益を欠くものと解すべきである。
重要事実
仮差押債権者である上告人は、債務者Dに対し、本件物件につき仮差押執行を行った。その後、Dが破産宣告を受けるに至った。本件物件の所有者を自称する被上告人は、Dの破産宣告後、上告人に対し、本件物件が被上告人の所有に属するとして仮差押執行の排除を求める第三者異議の訴えを提起した。
あてはめ
本件物件に対する仮差押執行は、債務者Dの破産宣告により、破産法(旧法70条、現行法42条2項参照)に基づき破産財団に対してはその効力を失った。執行の効力が失われた以上、本件物件は破産管財人の占有管理下に置かれるべきものであり、上告人の仮差押執行の排除を求める第三者異議の訴えによって解決すべき法律関係は既に消滅している。したがって、本件訴えは訴えの利益を欠き不適法である。なお、被上告人が所有権に基づき返還を求めるのであれば、破産管財人を被告として取戻権(現行法62条)を行使すべきである。
結論
本件第三者異議の訴えは、訴えの利益を欠き不適法であるため、却下を免れない。
実務上の射程
破産手続開始による執行失効の法理が、仮差押えにも妥当することを明示したものである。実務上、破産開始決定後は執行が当然に失効するため、執行手続の排除を争う訴えは無意味となり、権利主張の対象は破産管財人に移行するという実体法・手続法上の帰結を理解する上で重要である。
事件番号: 昭和44(オ)755 / 裁判年月日: 昭和48年2月15日 / 結論: 棄却
一、建物に対する債務者の占有を解いて執行官の保管に付し、現状不変更を条件として債権者に使用を許す旨の仮処分の執行に対し、右建物の所有者は、これを仮処分債務者に賃貸占有させている場合でも、第三者異議の訴を提起することができる。 二、第一審において全部勝訴の判決を得た原告も、控訴審において、附帯控訴の方式により請求を拡張し…
事件番号: 昭和38(オ)298 / 裁判年月日: 昭和39年5月7日 / 結論: 棄却
第三者異議の訴の係属中に、執行債権者において当該差押物件が執行債務者の責任財産に属しないことを承認して強制執行の取消を求め、差押が解除された場合には、特別の事情のないかぎり、右訴の利益は失われる。