有体動産に対する占有権は、差押によつて失われるものではないからその動産の占有改定による引渡は、差押の存続する間、差押債権者に対抗できないにとどまるものと解すべきである。
差押中の有体動産の占有改定の効力。
民訴法566条,民法183条
判旨
差押中の動産について占有改定による譲渡がなされた場合、差押債権者には対抗できないが、差押が解除されれば譲受人は所有権取得を債権者に対抗できる。
問題の所在(論点)
差押えがなされている動産について、債務者が第三者に占有改定により譲渡した場合、その後に差押えが解除されたことで、譲受人は所有権取得を債権者に対抗できるか。差押えの処分禁止効と占有改定による引渡しの有効性が問題となる。
規範
執行吏が差押処分により有体動産を占有しても、債務者は当該物件の占有権を喪失しない。差押中の譲渡および占有改定による引渡は、差押の存続中は差押債権者に対抗できないが、差押の解除によってその制限が消滅すれば、譲受人は所有権取得を債権者に対抗しうる状態となる。
重要事実
債権者Aは、債務者Bの動産を差し押さえた(第一回差押)。その差押の継続中、Bは第三者Cに対し、債務の担保として当該動産を売買名義で譲渡し、占有改定の方法で引き渡した。その後、Aは一旦第一回差押を解除したが、同日、同一の債務名義に基づき再度当該動産を差し押さえた(第二回差押)。Cは、第二回差押に対して所有権を主張した。
あてはめ
まず、動産が差し押さえられても債務者は占有権を失わないため、占有改定による譲渡(民法183条)は有効に成立し得る。本件では、BからCへの譲渡および占有改定による引渡が行われており、第一回差押の存続中はAに対抗できないものの、Aが自ら差押を解除したことで、その処分禁止の効力は消滅した。したがって、解除の瞬間にCの所有権取得が確定的に対抗力を備えることになり、その直後になされた第二回差押の時点では、Aは既に完全な所有権者となったCに対して差押の効力を主張できない。
結論
第一回差押の解除により、占有改定による譲受人は所有権取得を債権者に対抗できる。したがって、その後の第二回差押は認められない。
実務上の射程
差押えの処分禁止効が「相対的」なものであることを前提に、差押解除後の権利関係の確定を認めた。動産執行において、先行する執行手続が失効した後の二重差押えや、再度の差押えに対する第三者異議の訴え等の場面で、占有改定による対抗要件具備を肯定する根拠として活用できる。
事件番号: 昭和35(オ)133 / 裁判年月日: 昭和38年11月28日 / 結論: 棄却
建物の占有移転禁止、執行吏保管等を命ずる仮処分に対し当該建物について占有権を有することを理由として第三者異議の訴を提起した者が仮処分債権者との間の別訴においてその建物を収去してその敷地を明け渡すべき旨の判決を受け、それが確定したときは、その者は、その建物に対する占有権を有するからといつて、同建物について民訴第五四九条第…